本連載は基本的に、東証1部上場企業の決算データを扱ってきた。サントリー(第14回)や日本郵政(第39回)などの非上場企業も扱ってきたが、他の上場企業と遜色はなかった。
今回取り上げるのは、ヤフーと楽天である。ヤフーは東証1部上場(JASDAQと併用)なので従来の路線と変わらない。
楽天はJASDAQ単独上場。本連載としては初めての「非東証銘柄」で、ちょっとした冒険である。というのも、楽天の決算短信では〔図表 1〕に示す通り、「連結業績予想」が開示されておらず、経営分析に苦戦が予想されるからだ。
内部情報に通じている企業自身が「将来」の予測を公表できないというのであるから(もちろん、予算は組み立てられているだろう)、企業外部の第三者が「過去」の実績を読み取るにも相応の注意が必要になるということだ。
SCP分析で示すヤフーの業績推移
早速、ヤフーの業績推移から見ていくことにしよう。次の〔図表 2〕は、本連載第1回(ニッサン編)から登場させている、筆者オリジナルの分析道具である。SCP分析(Sale-Cost-Profit:タカダ式操業度分析)と呼んでいる。
〔図表 2〕において、2000~3000億円の間で推移している黒色の線は、ヤフーの実際売上高を、四半期ごとに移動平均させていったものだ。
赤色の「最大操業度売上高」はミクロ経済学の利潤最大化条件を満たす売上高を結んでいったものであり、青色の「予算操業度売上高」は量産効果を最も発揮する売上高を結んでいったものである。
両曲線に挟まれた領域を「タカダバンド」といい、この領域に黒色の実際売上高が絡まるように推移していくことが、企業にとって最も望ましいと解釈する。ヤフーの場合、09/3(09年3月期)までは、保有する経営資源をフル稼動させた状況にあったといえるだろう。
リーマン-ショックがヤフーの業績に与えた影響
ところが、08年9月に起きたリーマン-ショックは、ヤフーの業績にそれなりの影響を与えたようだ。09/6(09年6月期)以降、実際売上高だけは引き続き安定推移しているが、「タカダバンド」は上放たれて、コスト&利益構造が見事に崩壊している。
同社の定性的情報によれば、この時期「広告市況低迷の影響を大きく受けて大手広告主の広告出稿が減少」とあった。ここでいう「広告」とは、消費者金融や不動産業界を指すようだ。
09/12(09年12月期)以降、緑色で描かれた「損益操業度売上高」は1500~2000億円で推移している。09/3(09年3月期)までの推移(500~1000億円)と比較すると、リーマン-ショックによってヤフーの「損益操業度点」は1000億円も上昇したことになる。ヤフーにとって、忸怩たる思いがあるかもしれない。