昨年(09年)は「郵政民営化」か「民営化凍結」かで揉めていた。今年は「消費税率上げか、法人税率下げか」が話題の中心だ。「民営化凍結、反対!」を唱えていた人々も、いまは「消費税率引き上げ反対!」で忙しい。日本郵政の組織形態を巡る話題はいつの間にか「はなのいろは うつりにけりな」になってしまったようだ。

 今後、民営化凍結がどう着地するかはさておいて、日本郵政という「株式会社」がどういう特徴を持っているのかを、決算書に現われた数値のみをもって淡々と評価するのも趣向としては悪くないだろう。今回は、企業分析の世界で古くから知られている資金運用表や資金移動表などの分析道具に、筆者オリジナルの工夫を加えて解析してみよう。

 以下で紹介する奇想天外な図表や傍若無人の解釈に、驚かれる読者がいるかもしれない。しかし、利用しているデータは、日本郵政が対外的に公表しているもののみであり、「図南の翼を広げれば、ここまで飛べるのだ」ということを示すのが第一義だ。

 なお、四半期(3か月)決算を行なう上場企業と異なり、日本郵政は半期(6か月)決算であるから、その解析結果の精度は低く、あくまでトレンド(趨勢)を読みとるものである点に注意していただきたい。

”売上高”は18兆円超!
メガバンクを大きく凌ぐ巨大組織

 まずは〔図表 1〕に、直近の連結損益計算書を示す。科目の一部を要約している。

「世界最大の金融機関」は過去の栄光!<br /> キャッシュフロー分析でわかった日本郵政の前途多難

 〔図表 1〕の右上方に、経常収益「18,773,630」とある。これは郵便事業収益などの合計額であり、売上高に相当する。

「ひぃふぅみぃ」と桁を数えていくと「18兆7736億30百万円」であることがわかる。三菱UFJの経常収益5兆403億円や、三井住友FGの経常収益3兆1665億円と比べても、日本郵政の巨大ぶりがうかがえる。

 筆者の当てずっぽうで恐縮なのだが、日本郵政の経常収益を構成する三大事業については確か、生命保険事業(かんぽ)が黒字、銀行事業(ゆうちょ)が収支トントン、そして郵便事業が大赤字だったような気がする(注)。10年7月初旬に発生した「ゆうパック遅配騒動」は、赤字を垂れ流しする傷口に塩を塗る事件であったろうことは想像に難くない。
(注)10年5月5日付、日本経済新聞朝刊