インターネットを介した音声データの送受信サービス――いわゆる「VoIP」技術は、長くニーズの見込まれる分野として注目を集めてきたと言える。
たとえば、マイクロソフトが先頃インターネット電話サービス「Skype」を85億ドルで買収すると発表したことは、記憶に新しい。
そんななか、Facebookを活用した和製「VoIP」サービスがリリースされた。これまで数々のウェブサービスの開発を手がけてきた「面白法人カヤック」による「Reengo(リンゴー)」である。
使い方は、いたって簡単。iPhoneユーザーであれば、専用アプリをダウンロードし、Facebookアカウントでログインするだけでいい。アプリには自分の友達リストが一覧表示され、「Reengo」を使用している友人の横には電話マークが示される。それをタッチすれば、通常の携帯電話のように通話をすることができる。
「もともと、Facebook向けにこだわって開発したというわけではないんです。ですが最近、連絡手段として、メールよりもFacebookのメッセージ機能を使うことが多くなってきた。そこでいっそ、電話もできれば便利だろうと考えたのが、開発のきっかけです」(面白法人カヤック広報)
たしかに、Facebookのメッセージ機能やチャット機能は使いやすい。ほぼリアルなコミュニケーションを、簡便に実現することができるからだ。最近では、ちょっとした仕事の打ち合わせなどをFacebook上で行なってしまうという向きも多いのではないだろうか。
だが、メッセージやチャットでは伝えきれないニュアンスもある。とはいえ、相手の携帯にいきなり電話をかけるというのは、案外と億劫だ。そもそも、相手の電話番号を知らないということもあるだろう。
そんなときに「Reengo」は、威力を発揮する。Facebookアカウントさえ知っていればいいというシンプルさは、ことのほか便利だ。従来の「VoIP」サービスを利用する場合、専用クライアントソフトをインストールした後、自分のIDを相手に伝えなければならなかった。だが「Reengo」は、Facebookの既存のネットワークをそのまま活用することができるので、いちからネットワークを作り直す必要がない。
もちろん、海外からも通話可能。Wi-Fi環境があれば、電話料金を気にすることなく、どこからでも気軽に電話をかけることができる(3G回線を利用する際は、別途パケット通信はかかる)。あるいは、Facebookで久しぶりに再会した級友と、すぐに音声通話を楽しむという使い方もあるだろう。
また、アプリを立ち上げていなくても着信を受けることができるという点も嬉しい。位置情報の取得なども行なっていないため、バッテリーの消費電力も気にすることはないという。
Facebookという世界的なSNSをバックグラウンドとして活用できるだけに、「Reengo」を使ったコミュニケーションは、様々な用途が考えられる。それだけにユーザーの期待値も高く、「5月18日時点で約6万ダウンロード」(同社 広報)を記録したという。
今後は、Androidアプリのリリースや、iPhone版の世界展開も視野に入れているという「Reengo」。日本発の「VoIP」サービスの活躍に期待したいところだ。
(中島 駆)