西友が惣菜売り場を強化している。
単身化や働く女性の増加に伴って、惣菜の売り上げが伸びており、店舗の改装に合わせて順次、惣菜の取り扱いを拡大している。たとえば、東京・赤羽店では、昨年7月の改装に合わせて、惣菜の品目数を3割増やして約400品目として以降、惣菜売上高は前年同期比50%増で推移している。
きっかけは、2009年春に全国店舗に投入した298円弁当のヒットだった。それまで、スーパーで売られる弁当の中心価格帯は400~500円台だったが、西友が298円という業界常識を打ち破る低価格弁当を投入、これにイオンなど他社が追随するなど低価格弁当のブームを作り出した。サラリーマンのランチ仕様などに受け、「298円弁当をきっかけに、西友の惣菜が安いという認知が広まった」(西友)という。今では弁当のみならず、夕飯のおかずに加える一品惣菜などが好調だ。
予想を上回る売れ行きのため、翌年の2010年11月には埼玉県内に弁当工場を増設、首都圏への供給体制を拡充した。
西友の低価格惣菜の秘訣は、この工場生産によるセントラルキッチン化にある。スーパーの惣菜は店舗で加工するインストア加工が主流だ。工場生産の場合でも、卸などに外注しているケースが多い。
これに対して西友は、子会社の惣菜加工会社・若菜が北海道から九州まで全国に9の生産工場を所有、自社店舗への供給体制を築き上げている。工場で加工の大半を済ませた状態で店舗へ配送するため、店内調理はほとんどない。この自前のセントラルキッチン化が人件費抑制につながるなど低コスト生産を可能とし、298円弁当をはじめとする低価格惣菜の提供を可能にしている。
西友だけではなく「ここ数年、惣菜を拡充する動きは、スーパー業界共通の流れ」(大手スーパー)だという。1~2人などの小人数世帯では、自分で素材から調理するより、惣菜を利用したほうが手軽で経済的。国内人口が減少に転じて、マーケット全体が縮小していく中でも、単身などの少人数世帯は増えており、「惣菜は成長が見込める数少ない分野」(同)だという。
西友では拡大マーケットに低価格品を投入したことが、ヒットにつながったようだ。
日本スーパーマーケット協会などが発行している「2010年度 スーパーマーケット年次統計調査報告書」によると、分野別の目標とする利益率は、加工食品は18.7%であるのに対して惣菜は35.4%だ。このように、惣菜は粗利益率が高く、スーパーにとってはうまみのあるビジネスでもあり、惣菜拡充の動きは広がりそうである。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)