フラットシーマとは4本針ミシンの別名。通常のミシンで2枚の生地を縫い合わせると、ごろついたり、肌に当たったりするが、生地と生地を平らな状態に縫製するフラットシーマなら縫い目に段差がなく、肌あたりが少ない。「ただし、伸縮性のある生地なので縫うときにずれやすいんです。そうならないように、手を動かすときの感覚は、長年の経験で身につけました」(田原さん)

ゲイから火が付いた、男性の局部を絶妙に包み込むパンツの秘密熟練職人の田原ミツコさんは、難易度の高いフラットシーマ機を使い、はき心地のいいパンツを作り出す。フラットシーマを使うと縫い目が平らになり、肌当たりが軽減される。裏地と表地の見た目が変わらないのも特徴 Photo by Hatsuyo Hashinaga

 最近では、若手の指導にも熱心な田原さん。「いつも心がけているのは、きれいに失敗のないように縫うことです。むずかしい縫製の商品を依頼されると、いろいろ工夫したりしてますます意欲が増してきます」と、笑顔で話す。

 TOOTの商品は、男性らしさを強調するような独特の形が特徴だ。商品カタログにはセクシーな男性モデルも登場する。一方、工場で働く女性たちは素朴で真面目な印象。男性下着というだけでとまどう若い女性もいるだろうが、彼女たちは縫製のプロとしてTOOTのものづくりにプライドを持っている。

「いままで考えられなかったくらい最近、地元でも有名になってきました。セクシーなのでちょっと驚くかもしれないけど、今度、友達にカタログを見せてあげたい」と語る田原さんの表情は、少し誇らしげだった。

局部をほどよい膨らみで包み込む
フロントカップが人気の秘密

 「TOOTのパンツをはけば、女性がブラジャーを着けたときのような心地良さが味わえます。今まで締めつけられたり、安定しなかったりしたものが、優しく包みあげられる感覚は感動もの」

 カイゼル髭の口元を緩めながら、枡野恵也社長はTOOTを初めてはいたときの感想を語る。

 その最大の特徴が、立体縫製で仕上げるフロントカップだ。男性の局部をほどよい膨らみで包み込み、常にベストなポジションに持ち上げる。「ただ単に生地が立体的になるように裁断しているだけでなく、自然と持ち上がるように職人がいろんな工夫をしながら縫っています。だから、同じ商品であっても微妙にフロントカップが異なるのです」と枡野社長。

 じつは、この独特の形状とホールド感がゲイの男性の間で支持を得たそうだ。筆者は、最初見たときに「えっ、すごい大胆!」と面食らったが、フロントカップの自然な膨らみが男性の自信回復にもつながるのだという。