一見、身なりの良いサラリーマン。しかしカッチリしたスーツの下には女性用ブラジャーとショーツを身にまとう――そんな「ブラ男」が秘かに増殖を続けている。女装趣味ではないのに、なぜ彼らはブラジャーにハマるのか?その実態に迫った。(フリージャーナリスト 秋山謙一郎)
ブラジャーの締め付けが
昇進のストレスを解消した!
「とても気持ちが安らぐんです。もうブラなしでの生活は考えられません」――。
ブラジャーを愛用する男性、「ブラ男」の存在がクローズアップされたのは2013年頃からだといわれている。彼らはいわゆる女装趣味を一切持っていない。一見、ごく普通の男性として日常生活を送っている人たちだ。職場の同僚はもちろん、友人だって、よもやスーツの下にブラジャーを着けているとは、想像だにしないだろう。なぜ普通の男性が「ブラジャー」にハマるのだろうか?
“ブラ男”歴10年という大阪市内に住む会社員・タカトシさん(37)は、「ブラを着けるようになって他人にとても優しく接するようになった」と話す。
「下世話な話ですが、性的に満たされているとストレスが溜まらない、だから幸せに満ち溢れるといいますからね」
職場でのストレスから“ブラ”を着けるようになったと語るタカトシさん。きっかけは、係長職に昇進して「プレイングマネージャー」的な役割をするようになってからだ。今では、ブラだけではなく女性用ショーツも愛用しているという。だが、なぜ“ブラ”に“ショーツ”なのか。
「職場の宴会で、ブラとガーターベルト、ショーツで踊ったのがそもそものきっかけですね。なんか体を心地よく締め付けられる感覚、これが心地よくて。女性がいつも落ち着いているのは、コレなのかと思いましたよ」
この体験以降、時々、こっそりブラやショーツ、ストッキングを身に着けるようになったタカトシさん。その安堵感と幸福感にハマり、今では日常的に“ブラ”を手放せなくなっているという。
「ブラをしているとイライラしなくなるんです。女装趣味ではないんです。ただブラの締め付け感、これが気持ちを落ち着かせる。だからブラをしないで職場に行くと、もうイライラして。それで職場にもブラをしていくようになりました」
営業職のタカトシさんは、ブラを着けて通勤するようになってからスリーピースのスーツを愛用するようになった。ブラの線が透けて見えるので、それを避ける目的である。