しかし、今回の災害について、「なかったこと」として済ませてしまうのは、ストレスを受けたこころを元に戻していくプロセスとして健全ではありません。
現在進行形で起きている原発問題ですら、もはや「なかったこと」にしようという人たちがいるのが現状です。差し迫った状況にあるにもかかわらず、被災者支援や原発問題の終息に全力を傾けるのではなく、これを政局に利用しようとする政治家さえいます。
日本人は、仮に「なかったこと」にできたとしても、世界はそうさせてくれません。海外で外国の人と同じエレベーターに乗ると避けられたり、日本製品の輸入が制限されたり、そのほかにも日本や日本人が拒否されることが、これから先も続いていくでしょう。
震災直後の非日常が終わり、本当の復興期に入っていくのはこれからです。
これから数年、あるいは十数年かかるかもしれません。一時的な興奮状態のなかで何をしたかということではなく、興奮状態が冷めたいまこそ、私たちに何ができるかということが問われてくるのです。
そんなとき、「なかったこと」にする姿勢で臨んでいては、これから先の長い復興を乗り切ることができないのでしょう。