産業医はあまり栄養のことを知らない?
診断に必要な情報・課題の共有が肝心
総務・人事の人と社員の健康管理について話していると、「保健師や栄養士には相談しやすいけれど、産業医には話しにくい…」と思われている印象を受けることがあります。また、社員から産業医との面談の希望が少ない時などは、「産業医が期待しているように機能していない」、「もっと良い産業医がいるのではないか」と思われていることも少なくないようです。
しかし、産業医の良し悪しを判断する前に、総務・人事として、社員がいいサポートを受けるために必要な情報や課題を産業医と充分に共有できているでしょうか。漠然と「社員を健康にして会社を良くしたいんですけど、どうしたらいいですか?」と聞かれるよりも、具体的な希望を教えてもらったほうが適切な指導ができます。医療も栄養相談も同じです。
例えば、新しく着任した産業医に「メタボの社員が多い」ことを伝える際にも、どの部署に多い、理由はなにが考えられる、という情報があるのとないのとでは、アドバイスのしやすさが大きく違います。会社全体としての改善策はもちろん、個人面談の際の掘り下げ度合にも影響してきます。職場巡視する際にも、事前情報があるほどに視点は多くなるものです。
また、「何かあっても産業医がいるから大丈夫」と安心している場合でも注意が必要なことがあります。産業医を設置することは会社としての義務は果たしていますが、何をもって「大丈夫」というかは難しいからです。
先日、企業での食事相談をしていた際に「体重を落としたい」と希望する人が、「実は、産業医からも体重を落として血圧を下げないと、人工透析を始めるのも遠くないって言われているんです」とおっしゃるので、医師からのアドバイスの内容を聞いてみると「運動をして、ラーメンをやめろと言われました」とのことでした。
アドバイスは間違っているものではありませんし、産業医がいるような社員数の多い企業での面談時間は限られています。
しかし、身長170cmで100kgを超えている人にいきなり「運動しろ」というのは難しい話ですよね。そもそも、平日は毎日深夜まで職場いるとしたら、運動する時間なんてとれません。
産業医との面談の場合、栄養士と違って話す内容がメンタルヘルスについてなど多岐に及ぶでしょうから、食事面について話す時間は本当に限られてしまいます。
だからこそ、総務・人事が産業医に対して「部署ごとの働き方や課題」などを事前にシェアしておくことで、非現実的なアドバイスに陥らないようにし、貴重な面談時間を有効に使うことにつながります。