「Japanisation」の症状の行方

 今年5月に海外投資家との意見交換で北京、ロンドン、ニューヨークを訪問した。なかでもニューヨークでは、年1回の企業金融定点観測のヒアリング調査を、1999年以降、10年以上続けている。

 そこで、2007年来のサブプライム問題を受け、4年間余りストーリーラインとして米国におけるバランスシート調整に伴う問題を、毎年定点観測してきた。

 米国は、2008年のリーマンショックを受けた危機への恐怖を経て、2009年以降は回復プロセスにあるが、その回復ペースは緩やかである。前回ニューヨークを訪問した2010年9月は、バランスシート調整の重さが「Japanisation」(日本化現象)として最も強く意識された局面だった。

 その後、2010年11月のQE2に加え、ブッシュ減税継続などの全面的な政策支援から、2011年に入って一転してJapanisation議論は後退し、市場では危機からの「出口戦略」が強く意識される段階に転換した。

 ただし、5月の訪問で「Japanisation」の症状が各所に残存することを確認した。足下で生じた世界的な金利低下は、欧米で残存するバランスシート調整圧力の反映と考えられる。

米国の利上げは予想以上に先か

 5月の米国出張では、米国のFRBの利上げは市場予想より先ではないかとの印象を抱いた。FRBは2011年6月にQE2を終了する予定であるが、一定期間、FRBは国債保有額を維持し、実際のFFレートの引き上げは、早くても2012年後半まで延びるとの認識に至った。

 また、場合によっては利上げが2013年に延びる可能性も考えられる。すなわち、エグジットへの姿勢は明確化されても、そこからの道程は意外と長いかもしれない。

 今年4月以降に生じた米国長期金利の低下は、以上の時間軸を市場が意識した面が強い。FFレート上昇が早期に見込めないなか、2011年の米国10年金利は4%までは達しないとの見通しを持っている。