化粧品大手、ファンケルの創業者兼オーナーである池森賢二氏が株式の売却へ動き出した。池森氏は世襲させず、グループ外部へ売却する意向だ。最有力候補は提携先でもある香港の会社だが、売却交渉は停滞気味になっている。
池森氏はすでに74歳。現在は名誉会長であり、第一線を退いているが、保有株式は22%。一族では合計35%を保有するオーナーだ。
売却の発端となったのはファンケルが2年前に行った資本・業務提携。相手は、香港および中国における販売代理店のファンタスティック・ナチュラル・コスメティクス・リミテッド(FNL)グループだ。香港・中国市場において資生堂に並ぶ高いブランドイメージを定着させ、急速に売り上げを拡大してきた手腕に着目。今後のアジア市場展開をFNLと共同で実施することにした。
その際、池森氏はFNLにファンケル株を5%売却。同時に、将来、全株式を譲渡するというオプション契約を密かに結んだという。
すれ違いが発生したのは昨年のこと。ファンケルとFNLはアジア展開戦略などをめぐって対立。これと前後して、FNLがオプションを行使して池森氏から株式を購入し、経営権を掌握しようとした。
ところが池森氏は、2年前の提携時に一時的に約2倍に跳ね上がった株価にこだわり、高値での売却を主張。価格で折り合わず、現在交渉は難航しているという。オプションがどの程度、拘束力があるものなのか不明だが、池森氏とFNLとの交渉は断続的に続けられている模様だ。
ファンケルにとってみれば親会社になる可能性がある相手だけに、勝手にアジア各国への展開を進めることはできない。経営陣は膠着状態が長引くなかで、早期に新しいオーナーが決まることを望んでいる模様だ。
この事態を解決できるのは池森氏だけ。自ら手塩にかけて育ててきたファンケルがアジア展開を足止めされて苦しんでいる姿をどんな気持ちで見ているのだろうか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)