大阪特区で始まる調剤業務の「一部外部委託」に反対する薬局経営者・薬剤師は少なくない。大手チェーンがより有利になるという不安、薬剤師の仕事が奪われるといった不安がにじむ。外部委託は中小薬局、薬剤師をつぶすのか。特集『薬局・薬剤師 サバイバルダンス』(全24回)の#11では、その答えを出す。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
薬剤師とのやりとり
「要らん時間」発言で炎上
お笑いコンビのかまいたちが2月末にテレビ番組で薬剤師について発した言葉が大炎上し、謝罪するという騒動があった。薬局で薬剤師から症状を質問されてやりとりするのは「要らん時間」という趣旨の発言をしたのに対し、「薬剤師を軽視している」という非難の声がSNS上などにあふれ返ったのだ。
薬剤師が患者から情報収集したり指導を行ったりするのは業務であり、これによって処方ミスなどが見つかることもある。その認識が不足した発言だったが、患者側にそのような感情を持たれているというのも、また事実である。
薬剤師には、患者とコミュニケーションを取る対人業務のほかに、処方薬をそろえる対物業務がある。対物業務に忙殺され、服用前はもちろん服用後までフォローするだけの対人業務に割く時間がなかなか十分に取れず、患者に価値を感じてもらいにくいのが実情だ。
大阪特区で始まる外部委託に
仕事が奪われる不安
そんな中で今夏、大阪市と大阪府の国家戦略特区で調剤業務の一部外部委託が始まる。これは、服用のタイミングが同じ薬を1回分ずつ一袋にまとめる「一包化」について、処方箋を受け取った薬局が別の店舗へ作業を委託するものだ(下図参照)。
特区で実施される調剤の一部外部委託について、反対する薬局経営者・薬剤師は少なくない。調剤に対する責任の在り方などを懸念するとともに、中小の薬局経営者は大手チェーンがより有利になる不安、薬剤師一個人は仕事が奪われる不安がにじんでいる。
確かに、特区での取り組みには大手チェーンが参加している。飲食チェーンがセントラルキッチンを導入しているように、外部や内部に委託して調剤作業をセンターに集めれば、大幅に効率化できる。
では、外部委託は中小薬局、薬剤師をつぶすのか。