転職2年以内の離職率は30%超 あなたは「死の山」を越えられるか?写真はイメージです Photo:PIXTA

統計によると、中途採用人材の2年以内での離職率は30%を超えると言われています。自身の成長のため、意気揚々と転職したにもかかわらず、なぜすぐに辞めてしまうのでしょうか? 本稿では、新天地で必須の「アンラーニング」について解説します。

※本稿は、徳谷智史『キャリアづくりの教科書』(NewsPicksパブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。

なぜ、転職後すぐの退社が多いのか?

 まず、事実を掴んでほしい。統計にもよるが、中途採用人材の2年以内での離職率は30%を超えると言われる(下図)。もっとも多いのが「入社後半年~1年」の退職だ。つまり、せっかく未来を描き、自身の成長を期待し、意気揚々と転職したにもかかわらず、1年を待たずしてそれがふいになってしまうケースが多いのだ。これは個人にとっても企業にとっても不幸なことだろう。

図 中途入社者の退職につながりやすい期間 出所:エン・ジャパン(『キャリアづくりの教科書』P.358より転載)図 中途入社者の退職につながりやすい期間 出所:エン・ジャパン(『キャリアづくりの教科書』P.358より転載) 拡大画像表示

 逆に、入社後1年を超えると離職率は下がる傾向がある。そのため、私はこの「半年~1年」を転職後の「死の山」と呼んでいる。

 ちなみに、早期離職は意外に、若手よりも、自分に自信を持っているハイキャリアな方に多いのだ。

「鳴り物入り」ほどすぐ辞める

 あなたの周りでも、鳴り物入りで入社したにもかかわらず、さほどの成果も出せずに、1年以内で離職してしまった方はいないだろうか。

 中堅以上のハイキャリア層は、一定の成功体験やその経験に基づく「持論」を持っていることが多い。過去に成果を出してきたからこそ、相応のポジションに登用されているわけで、自分なりの仕事の進め方やマネジメントスタイルにある程度の自信を持っている。そこが、「落とし穴」となるのだ。

 前職では、相応のポジションにいて、周りから引き留められもしただろう。さらに、転職検討時はエージェントからちやほやされていたケースも多い。

 人はプライドに引っ張られる生き物だ。だからこそ、思ったほど成果が出せないときに事実を直視しきれず、つい新しい組織のせいに、つまり他責にしてしまう。しかもまだ「転職商材」として価値があるとみられれば、エージェントから、「でしたら他に転職しましょう」と声がかかってしまう構造がある。

 このように、中途半端な成功体験やプライドが邪魔して自己変容できない方を、本当に数多く見てきた。その先がどうなるかは、もう想像がつくだろう。

 重要なのは、自己変容、アンラーニングができるかどうかだ。若手もシニアも、その点を頭に入れて読み進めてもらいたい。

新しい場所で必須の「アンラーニング」 カルチャー・バリューを「背景と文脈」から理解する

 カルチャーについて、少し深掘りしておきたい。転職後の「カルチャーのミスマッチ」は本当によく聞く。離職の主要因と言ってもいい。

 カルチャーとは、組織の内部で自然に培われ、組織や従業員間で当たり前の共通認識となった規則や価値観、つまり「空気感」のようなものだ。目に見えない分、どうしても入社前には100%は掴みづらく、入ってみたら意外とフィットしなかったということがよく起こる。

 前職での価値観をそのまま持ち込むと、以前は評価されたはずの行動でも、「考え方が何か違う」と、逆に周囲からは「ズレ」として捉えられてしまう。

 バリューを明文化している企業は、入社検討時によく見ておこう。そこに「社員にどんな行動を求めるか、何を大事にしているのか」が表れている。また、バリューを掲げるだけで浸透させられていない企業は、さらに問題が根深い。「バリューがお飾りになっていないか」を確かめるいちばんわかりやすいポイントは、複数の社員に聞いてみて、同じ趣旨のメッセージを答えられるかどうかだ。

 カルチャーを理解する際には、明文化された文章だけでなく、そのカルチャーが創り上げられた背景や文脈から理解することが重要だと言われる。創業者の想いや、立ち上げの経緯などだ。もし本人が在籍し、直接聞ける規模なのであれば、直接聞いてみるのがもっともよい。背景に込められた意味や歴史を知ることで、そのニュアンスを立体的に掴むことができる。

 直接創業者に聞くことができない場合は、その分記事や資料がまとまっていたり、語り部となる初期のメンバーがいたりするため、何かしら、文脈を理解するための方法はあるはずだ。

同じ言葉でも違う意味

 より具体的に言えば、カルチャーや、バリューの「言葉の意味合い」をきちんと理解することが重要だ。同じ言葉を使っていても、組織によってその意味合いは異なる。

 たとえば、「スピード」という言葉も、大きい組織では「定められた期限内に遂行する」を意味することもあれば、スタートアップでは、「『当日中』に、どれだけ粗くても何かしらのアクションを返す」を意味することもある。

 カルチャーの細かな意味合いは軽んじられがちだし、「わかった気になりやすい」のが盲点だ。明文化された文章だけでなく、何がこの会社では評価されるのか(されないのか)などの要素もふまえ複合的に理解し、解像度を高めてほしい。

なぜ、わざわざアンラーニングすべきなのか

 さて、ここは特に大事な箇所だ。アンラーニングとは、いわば「過去の経験を一回捨てる、もしくは脇に置いておく」ことを指す。「過去の学びを手放すこと」とも言えるだろう。

 私がアンラーンの重要性を話すと、「なぜせっかく積み上げてきたものを捨てなければいけないんだ?」と怪訝(けげん)な顔をする方も多い。ごもっともだ。丁寧に説明していきたい。

 特に転職した場合にアンラーニングすべきことは、「過去の成功パターン」「所属していた会社の意思決定構造」の2つだ。アンラーンができていないことが原因の失敗は非常に多い。例を挙げてみよう。

(1)業界の行動基準が違うがゆえに、うまくワークしないケース

 外資系企業から、大手商社に転職した方だ。どちらの会社も「合意形成」を経て進めることが重要だった。だが、前職の外資系企業では、自身の直属の上長が評価者であり、かつ意思決定者でもあったので、目標も、実務も、直属の上長との合意形成をしておけばよかった。一方で、大手商社に移ってきてからは、想像してはいたものの、合意を取るべきステークホルダーが予想以上に多く、苦戦した。

 というのも、直接の上長への合意形成はもちろんのこと、上長経由でのその上の役員への合意形成、加えて、関連組織の管理職や関係者が集まる場での「事前合意」も必要だった。直の上長とだけの合意形成で突っ走ったところ、いつまでたっても企画が進まないばかりか、組織内で大きな不和まで生んでしまった。

 計画策定やプロジェクトマネジメント、合意形成が得意なつもりでも、業界や企業規模やステージが違えば、判断基準の不一致は「必ず」生じる。そのくらいの認識でいることが重要だ。

(2)過去の自分の成功スタイルにとらわれ、失敗するケース

 いちばん多い失敗パターンはこれだ。私は先ほど、「3カ月を区切りに組織にとって価値ある成果を出そう」と話した。

 一方で、短期の成果を急ぐあまり、前職、過去の成功スタイルで無理に突破しようとしてしまうと、その「焦り」が落とし穴になる。よくある例を挙げよう。