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カプコンの開発統括トップ、一井克彦専務に聞く
世界市場での闘い方とゲーム業界の真のチャレンジ

石島照代 [ジャーナリスト]
【第20回】 2011年8月2日
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 まず、欧州はギリシャの金融危機などの外部要因が強く影響し、全体的に弱含んでいます。北米地域も米国債デフォルト問題などがありますが、相変わらず100億ドル規模の市場を保っており、過去の記録を塗り替えるような大ヒットが家庭用ソフト市場で生まれています。

 一方で日本を見ると、既存のゲームビジネスよりも、SNSゲームビジネスに勢いがあるという指摘は、実際に売上高や利益を見ても事実だと思います。ただし問題は、これが時代の流れであるか、どうかです。

 まず、SNSゲーム市場は、今までゲームを全くやっていないけれども、携帯は持っているからゲームをやってみたいという非常に多くの層を巻き込んで、非常に短期間に大きくなっています。その中には、今までゲームをやっていたけど、そっち側でゲームをやってみたら案外面白かったという方も当然おられるでしょう。

 この既存の市場から流れている人を、我々は無視できないし、無視する気もないです。私はここを強く取り込んでいこうと思っていますし、そのために足早に組織改革を進めています。

 そして、この市場はある程度の規模で、そのまま安定するでしょう。そして、結果的にゲーム市場という全体的なマーケットは大きくなるはずです。ですので、私は全くこの市場の存在をネガティブに捉えていません。しかも、全体的な市場が大きくなることで、コンテンツの寿命は結果的に長くなると考えています。

石島:この状況を受けて、ユーザーさんに高い価格価値を訴求するパッケージビジネスが時代遅れだという指摘もありますが、それは極端ではないでしょうか

一井:その通りです。本当に時代遅れだったら、「モンスターハンター」の最新作は460万本も売れないでしょう。お金を何度も払いたくないユーザーさんもおられるでしょうし、形あるものとして手元にゲームソフトを残したい方もおられるでしょうから、パッケージビジネスのような形は残ると思います。

 では何が問題なのか。私は、メーカー側の問題だと感じています。欧米の競合他社と比較すると、日本のソフトメーカーは、プレイステーション3やXbox 360というより開発費のかかるハードに対して、積極性が弱かったのではないかと。それがひいては、ユーザーに対して魅力のあるゲームを十分に供給できず、結果マーケットが縮んで見えるという悪循環を生んだのではないでしょうか。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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