いわゆるキワドいテーマをキワドく扱っている割に後味の悪さを感じないのは、首都圏における東西南北のあらゆる方面を平等に蔑んでいるためなのか、はたまたこちらの感覚が麻痺しているだけなのか。いずれにしても、自分の足で徹頭徹尾というスタンスは意外に重要なポイントで、これがあるからこそ芸風として確立された印象を受けるのだ。

都県境の辺縁部に
見られる共通点

 街別に見ていくと、やはり都県境の辺縁部には共通する何かがあるように感じる。北千住、竹ノ塚、小岩、町田、西川口、八潮…。これらの街の犯罪多発地帯、不法占拠スラム、ドヤ街、バラック地帯、カルト宗教施設、不法移民・不良外国人居住区などが、つまびらかにレポートされている様は必見だ。

 街の指標を測る術として、企業のマーケティング活動の中から見抜いていくという技も中々秀逸である。フードコートにポッポがあるかどうか、激安飲料自販機が多いかどうか、「カードでお金」「車でお金」といった野良看板があるかどうか等々。

 それだけでは終わらない。「東京場末タウン散歩」というコーナーでは、江東区の東雲と辰巳という運河を挟んだシンメトリーの構図を描き出し、「首都圏バラック建築鑑賞会」のコーナーで紹介される神田の今川小路、中央区勝どきの狭小長屋群からは、もはや永遠に保存すべき天然記念物のような雰囲気が醸し出されている。

 もちろん「首都圏ドヤ街探訪」では鉄板の山谷から、誰もが一度は通って気になっていたであろう新宿南口の簡易宿泊所が立ち並ぶ一帯まで。そして極めつけは番外編としての朝鮮大学校の学園祭レポート等、相手が誰であろうと筆が止まる気配は一向に感じられない。

 冷静に考えれば、住む街を決めるというのは、人生でそう多くはないお祭りごとである。そんな非日常モードのまま、日常の住む場所を決めなければならないわけだから、選択ミスを犯すのも無理はないのかもしれない。

 どんな街にも光と影がある。住むには適さないかもしれないが、それぞれの街に怪しさゆえの魅力が溢れていることもまた事実。だから住みたくない街としての暗部が、そのまま東京の裏・観光案内にも思えてくるのだ。やはりタイトル「住みたくない街」のフリは、よく効いている。

(HONZ  内藤順)