この時期、ソーシャルメディア全体のユーザー数は増加していましたが、企業活用の前例は少なく、手探りで進めていくしかありませんでした。芸能人による活用が始まり、当時最も注目されていたTwitterアカウントの運用を行ってみましたが、私たちのリテラシーの低さもあり、全く機能させることができず大失敗でした。

 このとき「共有→共感→共振」への連鎖を作りたいと考え、一方向の発信(ツイート)ではなく、インタラクティブな仕掛けをすることで、ダイレクトなコミュニケーションに近い効果と、共有・共感・共振の連鎖作りを模索したのですが、ユーザーが半匿名で、ともすれば、企業活動がユーザーにとってノイズと捉えられてしまう場であり、学生の就活に向けたツールとしては副次的なものであると感じました(後に採用でTwitterを上手く活用している方と出会い、私たちのリテラシーの低さを反省するわけですが……)。

 その後、私たちが主に使用したのは、Facebookです。オープンな実名コメントでのやりとりによるインタラクティブ性、イベント機能を使った「ネット」と「リアル」の融合、そして何より、求めていた「共有(シェア)、共感(いいね)、共振(イベント参加)」が見事に実現できるツールだと考え、Facebookを中心とした採用活動に切り替え、積極的に活用することしました。

フェイスブックの有効性

 Facebookページを立ち上げ、積極的に情報発信を行っていきましたが、このとき意識していたのは「学生のための就活コミュニティの場となる」ということです。

 例えば「これからの働くことを考えよう」というテーマでFacebookに投稿し、学生と採用担当がインタラクティブにやりとりをする場として運営していきました。採用・就職において重要なのは、まずは個人の価値観や思考性を知ることであり、会社全体の概要や事業内容などの理解は最後でいい、と考えていました。

 結果として、2010年当時では多数となる1700程度の「いいね!」数を獲得し、企業活用のランキングでも上位に位置することができました。何よりFacebookページに来てくれるユーザーがアクティブであったことが特徴でした。

 このとき工夫したのは、より議論が盛り上がるように、ページに独自開発のプラグイン(機能拡張のためのプログラム追加)を設け、コメント欄が就活生のコミュニティになる「2ちゃんねる」のような機能を盛り込んで議論してみたり、オフ会として「お菓子を食べて企業担当者と仕事について語ろう!」というようなリアルイベントを絡めるなどして、学生と深く関わることができるれるよう、「エンゲージメント」を重視したコミュニケーションを行ったことです。

 これらの活動を集中して行うことで、私たちと学生が互いに深いレベルで話し合えるコミュニティが形成され、学生との濃いつながりが生まれていきました。

 当時、Facebookのつながりは「企業→学生」という一方向的なものではなかったため、共感した学生がさらにその仲間を連れてくる、というような口コミ的な拡散を続けていきました。

 これにより、通常では接点がなかった、ナビでの就職活動に疑問を持っている学生層や、信念を持って就職活動がしたい、独自の就職活動がしたい、という自律的な学生とも接点を持つことができたのです。