茨城県が8月4日、官製談合の疑いで公正取引委員会から改善措置を求められた。

 舞台となったのは、県西部の二つの県の出先機関。農地整備や道路舗装などの工事を発注する際、所長や担当課長が受注業者を指定する「天の声」を発していたというものだ。発注者が談合の仕切り役を務める典型的な官製談合事件で、歴代所長など計12人の関与も明らかになった。

 公取委は別の出先機関でも同様の疑いがあるとして、県にすべての建設工事の発注業務について実態調査を要請した。

 いまだにこんなことを続けていたのかと呆れ返るばかりだが、当の茨城県は「官製談合は決してあってはならないものであり、きわめて遺憾であり、県民にお詫び申し上げます」(橋本昌知事)と、まるで他人事だ。官製談合に関与した59社を8月8日から指名停止処分にしたが、関係した県職員への処分などは第三者委員会の調査結果を待つという。

 官製談合によって公正な入札が歪められるケースが後を絶たない一方で、入札現場でなんとも奇妙な現象が広がっている地域もある。業者の談合告発を契機に、入札改革に積極的に取り組む長野県でのことだ。

 長野県は今年4月から入札制度を改定した。建設工事で低入札が多発し、また、委託業務で失格応札者数が増加するなど、制度の歪みが顕著になってきたためだ。

 委託業務の入札は失格基準価格(最低制限価格)の算定方式を変え、応札価格から飛び抜けた値を除いた82.4%以上(予定価格に対する比率)の応札価格の平均値を出し、その97%を失格基準価格とすることにした。

 この変更によって、失格基準価格が予定価格の80%を下回ることはないという計算になる。それでも予定価格が事後公表のため、県は問題なしとした。

 ところが、新制度での入札が開始された直後から、困った現象が生まれた。予定価格の80%での同額応札が続出し、落札者をくじ引きで決める異常事態が相次いでいるのである。 

7月19日の測量業務の入札では、赤枠のとおり応札40社中23社が失格基準価格で横並びとなった。7月11日の入札でも46社中20社が同一価格だった。
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 たとえば、7月19日に行われた測量業務の入札だ。応札した40社のうち、23社が同額。それも失格基準価格でズラリと横並びし、落札者はくじ引きとなった。業者は独自の見積もりで、県の予定価格をピタリとはじき出せるからだ。

 新制度移行後、委託業務入札の半数ほどがくじ引き落札。もはや競争入札ではなく、くじ引き入札の様相を呈している。

 入札制度を担当する県建設部技術管理室は「このままでよいのか変えるべきなのか、実態を分析して検討する」と語る。

 同額入札でのくじ引きは電子くじ引きで、いかさまはできない。その面では公正さは保たれているが、くじ引き落札の多発は、競争性(価格面と品質面)を発揮させる入札制度の意義を揺るがすものだ。早急に改善すべきではないか。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相川俊英)

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