危機的な財政難に喘ぐ日本では、復興財源の捻出や税と社会保障の一体改革が急務となっている。そんななか、財務省をバックに登場した野田新政権は、「大増税時代」の幕開けを国民に印象づけた。もはや増税は不可避と思われる状況のなか、世論は「増税やむなし」と「絶対反対」の真っ二つに割れている。野田内閣の増税路線を巷の人々はどう見ているのか。また、そもそも政府は本当に増税路線を続けられるのか。政府、財界、国民の間で始まった「綱引き」の勝者と敗者は、誰になるのだろうか。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

現実味を帯びてきた「大増税時代」
いばらの道を行く野田首相に寄せられる声

 去る8月30日、民主党新代表に選出された野田佳彦・前財務相が、第95代内閣総理大臣に指名された。野田氏と言えば、かねてより“増税派”の筆頭として知られる。日本が危機的な財政難に喘ぐなか、東日本大震災の復興費や拡大の一途を辿る社会保障費の財源を賄うため、増税の必要性を訴えてきた。

 野田首相は、新代表選出後の会見で「復興に向けて作業を加速させる」と宣言。「作業」のなかに増税も含まれているかどうかはわからないが、当然、野田首相の視野には入っているだろう。

 一口に増税と言っても、いくつかの目的と段階がある。目下最優先しなければならないのが、9月中旬に召集される臨時国会で、第3次補正予算の編成に併せて議論される「復興増税」だ。

 政府税制調査会などの見通しによると、復興債の償還に必要な増税規模は約13兆円。増税議論は所得税、法人税、消費税をはじめ、酒税やたばこ税の引き上げにまで及んでいるが、今のところは所得税や法人税などの基幹税が中心となりそうだ。

 復興財源の捻出にメドが立てば、次は将来にわたる社会保障費の捻出や財政再建を目指して、税と社会保障の一体改革が本格的に議論されることになる。その際、ほぼ確実に議論の俎上に上ると見られるのが、消費税の大幅な引き上げだ。来年早々にも、通常国会で採択される可能性があると言われる。

 つまり、野田内閣の誕生によって、いよいよ「大増税時代」が幕を開ける可能性が高いのである。そこには、党内に強い支持基盤を持たない野田首相が、全省庁に対して睨みが利く財務省の力を借り、政策を推し進めようとする意図も見て取れる。