労働審判の手続きに要したAさんの費用は、1万9000円。これは裁判所に手数料として支払うもので、請求金額によって異なります。10万円の請求なら500円です。

 Aさんがそうしたように、自分で申立書を作成したり、証拠書類を揃えたりする手間はかかりますが、黙っていれば支払われない多額の不払い賃金を手にできるのです。そのことを考えれば、大した手間ではないし、費用もわずかといえるでしょう。

裁判よりも簡単・迅速!
未払い残業代請求には労働審判が便利

 サービス残業が問題になって久しくなります。かつては残業をしても、会社が決めたままに「残業代なし」を容認していた社員たちが声を上げるようになったのです。

 記憶に新しいところではマクドナルド店長訴訟があります。日本マクドナルドの店長が、管理職を理由に残業代を払わないのは違法であると訴えを起こしました。裁判の結果、会社は「名ばかり店長」だったことを認め、2年分の未払い残業代など約1000万円を支払うことで和解が成立しました(2009年3月、東京高裁)。

 未払い残業代は、声を上げれば取り戻せるのです。マクドナルド店長訴訟は、このことを日本中に知らしめました。しかしこの裁判、提訴から和解に至るまで3年余の歳月を要しています。その間、原告の妻も裁判所で証言するなど家族ぐるみで大変なエネルギーを費やしました。

 労働審判は、通常の裁判に比べると和解にせよ審判(裁判の「判決」に当たる)にせよ、結論を得るまで数カ月しかかかりません。訴訟と違って弁護士に依頼する必要もなく自分でできます。

 私は、不払い賃金だけではなく解雇や退職勧奨など多くの労働審判にかかわってきました。労働審判は会社で働く人たちにとって利用価値の高い制度だと確信します。

 悔しい思い、苦々しい思いを黙って抱えたまま悶々としているのではなく、一歩踏み出して声を上げるべきではないでしょうか。

 声を上げれば上げただけの結果は必ず得られます。私がかかわったケースでは、労働審判への申立ての準備をしながらも、申立て前に本人と会社側の話し合いで解決に至った例もあります。

「こんなに遅くまで仕事をしているのに、残業代が出ないのはおかしい」
「係長になったら残業代が出ないので、部下よりも手取りが少なくなった」

 こんな思いを抱いているなら、とにかく行動を起こすことをお勧めします。