会社に直接言っても、効果なし
第三者に介在してもらおう

 未払い残業代は、黙認せずに請求すれば取り戻せる! まず、このことをしっかり頭に入れておくことです。

 請求の手続きは、預金を下ろすように簡単ではありませんが、皆さんが思っているほど重くむずかしいものではありません。マクドナルド店長訴訟のように、裁判に訴え、しかも一審(地方裁判所)だけで済まないような展開になると、かなりのエネルギーを使うことになりますが、未払い残業代の請求はそこまで覚悟する必要はありません。

 2006年4月からスタートした労働審判制度は、そうした問題を抱えている人のためにできた有力な制度です。

 未払い残業代は、会社に直接請求しても「わかりました。払いましょう」とは、ならないでしょう。やはり第三者に間に入ってもらわなければ、解決の道は開かれません。

 第三者に介在してもらうというと、従来は、労働基準監督署や都道府県の総合労働相談センターなどに駆け込み、あっせんを受ける方法か、弁護士などに依頼して会社に内容証明を送るなどの方法をとるのが一般的でした。というより、これしかなかったといえます。

 しかし、公的機関によるあっせんや指導には強制力がありません。「わかりました。今後は改善すべく努力します」と言ってそのまま放置され、請求者に対しては実質的に支払い拒否を続けるケースだってあります。

 また、弁護士に依頼する方法は、当然、それなりの費用がかかります。会社は内容証明程度では驚きませんから、たいがいは顧問弁護士を使って請求拒否の返事を出すか、中小企業なら社長の「放っておけ」の一声で終わるかもしれません。

 もちろん、依頼した弁護士は次の策を講じます。マクドナルド店長訴訟のような民事訴訟です。こうなると、次第に重い手続きになってきます。時間もエネルギーもかかってきます。

 忙しく働きながら、2年も3年も裁判にエネルギーを費やすというのは、よほどの成果が得られなければ割に合いません。

 以上のような実情もあり、これまではサービス残業による未払い残業代の認識があっても、ほとんどの人が行動を起こせずにいました。

 労働審判制度は、サービス残業に悩む人たちのための救世主といえます。
 


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