会社が残業代を払わない理由としてよく使うのが「管理職だから残業代はない」「みなし労働なので残業代は発生しない」「残業代は職務手当に含まれる」というもの。しかし、実態は管理職でなかったり、みなし労働でない場合が多い。会社側のおかしな言い分にだまされないためにも、正しい知識を身につけよう。
「役職手当」は残業代不払いの隠れミノ?
管理職への昇格は残業代カットの手段だった
係長などの役職がついたとたんに残業代は支払われなくなり、部下よりも収入ダウンしてしまうということがよくあります。「たまには部下を誘って飲みにいこう」と思うものの、これではできません。「部下にご馳走してもらいたいぐらいだ」と思ってしまうことも、きっとあるでしょう。
管理職と残業代の問題は、大きなテーマです。係長クラスの管理職が会社で声を上げ、改善されたケースもありますし、こっそりと監督署に駆け込み、会社が監督署の指導を受けるといったケースもあります。
以前から問題にはなっていましたが、多くの“管理職”の不満がいっきょに爆発し、会社が是正に取り組まざるをえなくなったのは、やはりマクドナルド店長訴訟がきっかけでしょう。
この裁判以降、店長の未払い残業代の請求が相次ぎ、1年で10億円以上の支払いを余儀なくされた飲食店チェーンもあるくらいです。某コンビニエンスストア・チェーンの元直営店長が訴えを起こしたケースでは、入社後9カ月で「店長」に“抜擢”されたとたん、店員時代より8万円も給料がダウンし、しかも労働時間が圧倒的に増えたのです。
訴訟では、全社員の7割がこうした“名ばかり店長”だったという実態も明らかになりました。飲食店や小売チェーンにおける“名ばかり店長”は、残業代カットの手段であったことは、もはや議論の余地さえなくなりました。