未払い残業代を取り戻すための準備として、まずしなければいけないのが証拠集め。残業実態がどれだけあるのか、実際いくら支払われたのかがわからなければ、会社と争うこともできない。未払い残業問題に詳しい特定社労士の松本健一氏に、証拠集めのポイントと秘訣を聞いた。

むやみに行動しても成果は出ない
まず2つの資料を揃えよう

 未払い残業代や退職勧奨、あるいは上司のパワハラなど、会社員が悩んでいることや悔しい思いをしている問題は巷にあふれています。個別労働相談件数が毎年100万件を超えているぐらいですから、多くの人が切迫した問題として抱え込んでいるのです。

 悩んでいるなら行動を起こしたほうがよいと、この連載ではアドバイスしているわけですが、やみくもに行動を起こしても、望む結果が得られないことも事実です。たとえば、監督署などに相談に行くとしても、手ぶらではあまり相手にしてくれません。話ぐらいは聞いてくれるでしょうが、事実を裏付ける資料が何もないと監督官も動けないのです。

 では、未払い残業代について「おかしいな……」と思ったらまず何をしたよいでしょうか。

 一番肝心な資料は、

 ・実際に日々、何時から何時まで働いたか
  ・それに対して会社が支払った給料はいくらか

 の2点です。前者は、所定労働時間または法定労働時間を超えて働いた事実を証明するものです。後者は、労基法に規定されている割増賃金を払ったかどうかを証明するものです。

 この2つの資料がないと、何事も始まりません。会社に直接交渉するにしても、どこかに相談に行くにしても、この2点の資料が必須でとても重要になります。