ドイツ南部の街ミュンヘンで、世界一のビール祭り「オクトーバーフェスト」が開幕した。毎年650万人の来場者が来場し、600万杯以上のビールが飲まれるというから、ビール好きのみならずともノドが鳴るというものだ。
実はこのオクトーバーフェスト、2003年に横浜の赤レンガ倉庫で行なって以来、東京、仙台、大阪や長崎など日本各地で開催されている。行ったことはなくとも、「名前を聞いたことがある」「ポスターを見たことがある」という人も多いのでは。
オクトーバーフェストに限らず、最近では様々な場所でビール祭りの類が開催されている。そこでの目玉はズバリ“地域性”だ。「とりあえず生!」でもスーパーの6本パックでもなく、醸造元や産地を謳ったビール、いわゆる「地ビール」に注目が集まっている。
ところで、そもそも地ビールとはどんなビールのことを指すのだろう? 地ビールブームって何年周期かでやってくる気がするけれど……?
「きちんとした定義付けをされているわけではありませんが、キリン、サッポロ、アサヒ、サントリー、オリオンといった主要5社以外のビールを総称して“地ビール”または“クラフトビール”と呼んでいます」
話をうかがったのは、東京・高円寺のビアカフェ『萬感』(東京都杉並区高円寺南3-47-8/TEL:03-3314-5008)のオーナー・高橋雄一郎さん。国産地ビールを常時13種類サーブしている人気のお店だ。
聞けば、地ビールの誕生は1994年にまで遡るという。酒税法の改正によって、ビールの最低製造量が2000キロリットルから60キロリットルにまで引き下げられ、小さな酒蔵でも製造が認められたことから、第一次地ビールブームが発生した。
この規制緩和に目をつけたのは、主に自治体の観光協会や地酒の酒蔵だった。観光客誘致のアイテムとして地ビールづくりに精を出し、地酒に対しての地ビールというネーミングもこのあたりに由来するようだ。
ただ高橋さんによれば、「この当時の地ビールはお世辞にもレベルの高いものとは言えませんでした」とのこと。規制緩和によって、新たな商材を取り扱えるという理由“だけ”で参入してきた企業や組織が増え、肝心の味について気を配る余裕がなかったのだろう。今の50代、60代に地ビールというと、「ああ、あのクセのある?」といった微妙な反応が返ってくるのも、こんな理由がある。ただ──
「今は当時と違います。ブリュワリー(醸造元)の努力もあって、レベルの高い、本当に美味しい地ビールが増えてきました。常時グランドメニューに載せる飲食店や酒屋さんも、地ビールが魅力的な商材だということに気づいたのでしょうね」
その心は“日本全国全ての都道府県に地ビールがある”点に他ならない。都市部への一極集中化に批判が集まり、地方の活性化が注目を浴びる昨今、日本が元気になるためには特に魅力的な商材だと言えよう。
東北地方の応援消費に都内のアンテナショップが一躍買っていることは、以前の記事でお伝えしたが、地ビールに備わるアピール力もなかなかのものではないか。
地ビールの味そのものが向上し、地ビールづくりに力を入れる醸造元が増えたことで業界全体が変わり始めている。さらには、以前の地ビールを知らない世代がモノの良し悪しを冷静に見極めている今こそ、「『地ビール新時代』の幕開け」が訪れているのだ。
(筒井健二/5時から作家塾(R))