二者択一を迫った9・11後のブッシュ大統領
私がそのことを強烈に感じたのは、2001年の「9・11事件」がきっかけです。
事件直後、犯人グループはイスラム圏の誰かだろうと言われていました。しかし、首謀者がオサマ・ビンラディンと特定されていない段階では、新聞やテレビは多様なコメントを語っていました。
「この事件が起きてしまった背景には、アメリカの覇権主義に対して世界の誰かが反抗を始めたのではないか」
「これはキリスト教文明とイスラム教文明の衝突だ」
「アメリカ一国覇権主義にも否がなかったとは言えないのではないか」
これが一変したのは、ブッシュ大統領の演説がきっかけです。
大統領は「アメリカは断乎として戦う」とテレビカメラに向かって語りかけ、同時に世界中の国々に対して決断を迫りました。
「我々の側につくか、さもなくばテロリストを支援する国家とみなす」
テロは許されることではありません。しかしながら、全面的にアメリカを支持するかどうかは考えさせてほしいという主張は認められませんでした。
テロリストは支援しない。しかしアメリカのアフガニスタン攻撃も支持できない。このような選択肢は認められなくなりました。テロリストに反対するということはアメリカの味方である。ということは、アフガニスタン攻撃にも全面的に協力する。
やがて多様な意見は言えなくなり、二者以外の選択肢は封殺されていきました。