佐藤智恵氏

佐藤 アメリカの学校の学費の高さには驚くばかりです。トップレベルの学校の学費を見てみると、私立保育園の学費は年間2万ドル(約200万円)、私立の小学校から高校の学費は年間5万ドル(約500万円)ぐらいというのが相場のようです。これでは、一般庶民には手が届かないですね。良い教育を受けられなければ、良い仕事も得られない、という負のスパイラルに陥っていきます。

ヴォーゲル 最も失望感が強かったのが、低所得の白人男性です。彼らは「自分たちが不遇の状況にあるのは有色人種、移民、女性が優遇されているためだ」という気持ちを強く抱くようになりました。トランプ大統領は、彼らの失望感をうまく利用したのだと思います。

佐藤 トランプ大統領は、公言通りアメリカの格差問題を解決することができるのでしょうか。

ヴォーゲル トランプ大統領は「アメリカの労働者の収入を上げます」「格差を縮めます」と言っていますが、私たち学者は全く期待していません。彼は誰からの助言も聞き入れないし、勉強もしていない。彼が言っていることは実現しないだろうと思います。

佐藤 日本は今後、世界でどのような役割を果たしていくべきですか。

ヴォーゲル アメリカ、中国が世界の政治、経済をリードしていくことに変わりはないですが、トランプ大統領には、世界の繁栄のためにリーダーシップをとろうという気はさらさらないでしょうから、日本がアメリカの代わりに、その役割の一部を担うことはできるでしょう。

 日本では貧富の格差がそれほど大きくないですし、日本国民の教育水準は依然として高い。医療制度も整っているから、国民は健康で長生きできる。それから犯罪率も低く、治安も良い。日本のこうした長所は、世界の模範になると思います。

 日本は世界で非常に人気のある国だと思います。世界の多くの国と協力して、環境、平和、貿易など日本が得意な分野で世界に貢献していっていただきたいです。

エズラ・ヴォーゲル (Ezra F. Vogel)
ハーバード大学名誉教授。専門は社会科学。ハーバード大学東アジア研究所所長、フェアバンクセンター所長などを歴任。1993年より2年間、米国国家情報会議の東アジア担当国家情報官を務めた。1979年に出版された『ジャパン アズ ナンバーワン: アメリカへの教訓』がベストセラーに。近著の「現代中国の父 トウ小平」(日本経済新聞出版社)は中国国内で大ヒットを記録。
佐藤智恵(さとう・ちえ)
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。コロンビア大学経営大学院入学面接官、TBSテレビ番組審議会委員、日本ユニシス株式会社社外取締役。主な著者に『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)、『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、最新刊は『ハーバード日本史教室』。佐藤智恵オフィシャルサイトはこちら