TPP参加反対を叫ぶデモが盛んになっています。ギリシャを中心に欧州でも、そしてニューヨークを中心に米国でもデモが続いていることを考えると、日米欧と主要先進国すべてにデモが伝播したとも言えますが、日本のデモと欧米のデモを比較すると、どのようなインプリケーションが得られるでしょうか。

TPP反対デモと欧米のデモの共通点

 ギリシャやイタリア、スペインなど欧州で頻発しているデモは、債務削減のための緊縮財政に抗議するものです。金融危機が欧州全体に広がる中で、年金などの社会保障は削減されるわ、消費税は増税されるわと、中流階級以下の生活がどんどん圧迫されることへの抵抗と考えることができます。

 ニューヨークを中心に米国で続くデモは、「我々は99%だ」という主張からも明らかなように、米国人の1%の大金持ちが国全体の所得の20%を得ているという格差への怒りが背景であり、ウォール街の金融界がシンボリックな攻撃対象となっています。

 これに対して日本で盛り上がっているデモは、TPP、つまり自由貿易反対運動です。TPPに参加すると日本の農業が崩壊してしまう、医療でも国民皆保険が崩壊する、と与野党の政治家も大挙して参加して大騒ぎをしています。

 このように、日米欧のデモは表面的にはそれぞれ別の要因から発生しているものの、偏見に満ちた個人的な見解で恐縮ですが、本質的には同じ理由から起きているように見えます。それは「グローバル化」と「財政支出の削減」です。

 グローバル化が進むと、ウォール街の金融機関やグローバル企業は収益を増大できますが、中流階級以下の単純労働ほど機械や途上国の安い労働力に代替されるので、先進国では雇用や所得を維持するのが難しくなります。

 政府の財政に余裕があれば、財政出動でそうした層の生活を支え、社会的な不満も抑えることもできました。しかし、欧米ではリーマンショック以降の過剰な財政出動への反動で財政規律回復が優先されるようになり、それが不可能になったためにデモが頻発しているのです。