「短い言葉」で、メンバーの頭に刻み付ける

 特に、何かにチャレンジするときや、改革が必要なときには、言葉を徹底的に磨き上げる必要があります。とはいえ、何もコピーライターになるわけではありませんから、言葉に凝る必要はありません。伝えるべきことの本質を明確にして、それをわかりやすく、印象に残る言葉にする。それができれば十分だと思います。

 第一の要件は、「短い言葉」であることです。
 ダラダラと話しても、メンバーは話を理解するのに精いっぱいで、心に刻み付けるところまではいきません。「短い言葉」でインパクトを与える。そして、そのキーワードをことあるごとに、耳にタコができるほど繰り返すことによって、ようやくチームに浸透していくのです。

 たとえば、私がブリヂストンCEO時代にスローガンとして掲げたものに「4倍速」という言葉があります。新興国のタイヤメーカーは規模が小さいだけに動きが速い。それに後れを取って致命的なダメージを受けることを恐れたため、「ライバルが2倍、3倍のスピードで挑んでくるのは当たり前なので、我々はいまの4倍速を出さなければ勝てない」というメッセージを出したのです。

 要するに、「スピード経営を徹底する」ということですが、これだけでは言葉として弱い。そこで、「4倍速」という言葉を私なりに考え出したわけです。単に「スピードを上げよう」というよりも、数字が入ったほうがインパクトがありますし、「2倍速」では急き立てる感じが出ない。だから、「2倍速」のさらに倍ということで、「4倍速」という言葉を使ったのです。

 そして、部下の動きが遅いと感じたときには、「4倍速で頼むよ」「2倍速じゃダメだ。4倍速じゃないと負けるよ」と、「4倍速」という言葉を連打。短い言葉ですから何度も耳にすると、必ず脳に定着します。しかも、短い言葉だからこそ、部下たちも口にしやすい。自然と、組織のなかに「4倍速」という言葉が浸透していくのです。そして、言葉が浸透すれば、「仕事のスピードを上げなければならない」という意識が定着し、個々の行動を変えていくのです。