「当たり前」のことを繰り返し語り続ける

 リーダーの「言葉」に関しては、もうひとつ重要なポイントがあります。
 年頭の挨拶など定期的にメンバーに語りかける「言葉」がありますが、このような場面では原理原則に類する「当たり前」のことを何度も何度も語り続けるべきだと、私は考えています。

 実際、私がCEOを務めていたころの年頭挨拶はまったく面白味のないものでした。「また同じこと言ってるよ」と思った社員も多かったと思いますが、私は、そこに値打ちがあると思っていました。リーダーとは、その組織の根本的な価値観を体現する存在です。その存在が話す度に違うことを言っているようでは、組織全体で徹底的に共有すべき価値観が不明確になってしまうと思うからです。

 気の利いたリーダーであれば、最新の“流行り言葉”を織り交ぜながら、流暢に、聞き心地のいい挨拶をするかもしれません。しかし、数年経ってみたら、たいていその“流行り言葉”は組織になんの影響も与えず、色あせているもの。ということは、そのときの「言葉」も、しょせんその程度のものにすぎなかったということです。

 ビジスの背骨は、たかが数年で変わるようなものではありません。“流行り言葉”を口にすれば格好いいかもしれない、などというのは浅はかな下心にすぎません。それよりも、リーダーが愚直に「当たり前」のことを語り続けることによってこそ、図太い背骨の通った経営をすることができるようになるのです。