その4 消費税は地下経済からもある程度徴税できる

 世の中には麻薬や売春など、法律では禁止されていてもかなり大きな経済活動が行なわれている市場があります。このような違法行為は当然ですが税務署に申告されることはありません。それらは暴力団の資金源にもなっています。

 違法でなくても、パチンコ屋や風俗店のように不特定多数の客が利用する現金商売では税金の捕捉がむずかしいです。僕のように100%収入が捕捉され、ごっそりと税金を取られているサラリーマンからすると、日本の税制は非常に不公平感が強いです。

 しかし消費税ならこういった地下経済からもある程度徴税することが可能です。理由は単純で、違法なビジネスで稼いだお金もそれらが使われる時には消費税がかかるからです。麻薬の売人や売春婦もレストランで食事もすればブランド物のバッグを買ったりします。その時に消費税を取れるのです。

その5 消費税は個人のプライバシーを守る

 所得税や相続税は課税の際に国家権力が個人の収入や財産を調べる必要があります。その点、消費税なら業者がきっちりと帳簿をつけて納税すればいいだけなので、個人は収入や財産という非常に重要なプライバシーを国家から守ることができます。この点だけを強調するなら、究極的には所得税も相続税も法人税も廃止して、消費税だけにすることが好ましいでしょう。

 僕は、日本の大きな財政赤字と、日本の金融資産の多くが高齢者に偏在していることを考えると、相続税をしっかり取ることは財政規律が確立するまでの間は避けられないだろうと考えていますが、やはり、国家権力が個人の財産を根掘り葉掘り調べるという行為にはかなり抵抗があるのも事実です。

 相続税を強化すると口でいうのは簡単ですが、実行するのはなかなかむずかしいでしょう。たとえば現金でタンスかどこかに隠しただけで、それがみつからなければ脱税できてしまいます。それを避けるには、税務署に疑わしい家には土足で上がりこんで好きなだけ調べてもよいという権限を与えなければいけません。政府がそのような強い権限を有し、個人のプライバシーを調べるというのは好ましいことではないでしょう。

 また、そもそも財産を形成する時に、すでに所得税やら法人税で税金を収めているのに、さらに残った財産に税金を課すのは二重課税で、税金として筋がよくないのは事実です。

 その点、やはり資産リッチで所得がない年金生活者からもまんべんなく税金が徴収でき、個人のプライバシーが守られる消費税は好ましいといえます。

 

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