会社が大きく傾き、国の支援にすがるしかない状況に陥りながらも、厚遇過ぎる企業年金の減額に抵抗する日本航空(JAL)のOBたち。
だが、上には上がいる。高額な年金給付を維持するために巨額の税金投入を平然と要求している人たち、地方議員である。
もともと特権的との批判が強い地方議員の年金制度だが、積立金が枯渇し、いまや破綻寸前。このため、総務省が廃止も含めた制度の見直し案を複数提示し、地方議員の代表らと議論を重ねている。JALの年金問題の陰に隠されてしまっているが、納税者として理解不能の協議が展開中だ。
地方議員年金は受給者にきわめて有利に制度設計されている。議員を12年務めると受給資格が生まれ、厚生年金や国民年金とのダブル受給もOK。議員の掛け金(月額報酬の16%など)と自治体の負担金(12%)が財源だが、公費負担が4割と手厚い。
現在(2007年度)の平均年金支給額は年額で、都道府県議が約195万円、市議が約103万円、町村議が約68万円だ。いかに選良とはいえ特権的過ぎると国会議員の年金制度は06年に廃止されたが、その一方で、地方議員の年金制度は温存されている。
この地方議員年金制度が破綻寸前となっている。もともと厚遇過ぎる制度に、「平成の大合併」による議員総数の激減が加わったからだ。受給者が急増し、現職議員は激減。積立金は底を突き、市町村分は再来年度にも枯渇する見通しだ。まさに、待ったなしの状態だ。
総務省が提示した案は3つ。このうち、2案は議員の掛け金を上げ、給付水準を下げることを条件に、公費負担を増やすというもの。3つ目が、制度を廃止し、掛け金の63%を一時金として支給する案である。その場合、約1兆3000億円の公金が必要と試算されている。いずれの案も巨額の税金を投入し、議員を厚遇するものだ。
こうした総務省の案に対し、全国市議会議長会などが独自案なるものを提示している。給付水準や掛け金に手をつけずに公費負担を今の12%から16%に引き上げろというものだ。つまり、税金で不足分を賄えという要求だ。自らの身を切ることは断固、拒否という姿勢である。
協議は12月21日が最終回で、年内に見直し案を固めたうえ、2010年の通常国会に関連法案が提出される見通しである。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相川俊英)