薄型テレビの販売不振が思わぬところに波及している。

 地デジ特需に沸いた薄型テレビだが、買い替え需要が一巡し、出荷数量は減少、価格低下にも歯止めがかからない。

 これを受け、液晶ガラス基板を手がける各社の業績が軒並み悪化しているのだ。

 液晶ディスプレイの主要部材であるガラス基板を手がけるのは、米コーニング(シェア約50%)、旭硝子(シェア約25%)、日本電気硝子(シェア約20%)、アヴァンストレート(シェア約5%)と、上位3社の寡占状態で、他の部材に比べても値下げ圧力は少なかった。

 そのため、旭硝子や日本電気硝子にとって営業利益率が40%近くもあるまさに“ドル箱”とも言えた。

 だが、「テレビやディスプレーメーカーなど主要顧客が連続赤字の状況では、われわれにも値下げ圧力が強まるのはいたし方ない」(日本電気硝子)。従来、四半期ごとに数%程度だった値下げ要求が、7-9月は1割近くまで強まったという。

 こうした状況を受け、旭硝子では7~9月の電子・ディスプレイ部門の売上高が888億円で前年比約28%減、また営業利益にいたっては287億円と同約44%も落ち込んだ。

 通期予想も売上高1兆2500億円(対前年3.1%減)、営業利益1700億円(同25.8%減)と下方修正を余儀なくされた。

「事業環境が回復する目処が立たない――」(ガラスメーカー)。需要や値下げ要求の動向は依然、不透明なままだ。

 しかしガラス各社も、指をくわえて見ているわけではない。急激な業績悪化に対応すべく、新たな収益源を求め新商品の開発競争を繰り広げている。需要が旺盛なスマートフォンやタブレットPCに関連する商品だ。

 代表的なのがタッチパネル製品用のカバーガラス。市場を開拓したコーニングに続けと日本やドイツのガラスメーカーも続々と参入している。

 ほかにも、薄さわずか0.1mm、ロール状に曲げることができる超薄板ガラスは次世代型フレキシブルディスプレイ向けに期待される。同じく次世代型と称される有機ELディスプレイ向けの新型ガラス基板の開発競争も盛んだ。

 電子関連のガラスは、新規のデバイスが誕生しそれが急速に普及すれば、市場が一気に拡大する可能性がある。ただ、新商品群が収益の柱に育つまでまだ時間を要すると思われ、ガラスメーカーにとってしばらく耐え忍ぶときが続きそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

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