【スクープ】三菱商事の洋上風力撤退で残る爪痕、千葉県内の国道など約400カ所で「試掘後の本復旧が未完了」…安全性に懸念の声Photo by Norihiro Okawa

三菱商事が千葉県銚子市沖など3海域での洋上風力発電事業から撤退を表明して半年が経過した。幻となった本格的な陸上送電工事を前に、同社側は地下の状況を確かめる「試掘」を県内の国道など約400カ所で実施していたが、元の状態に戻す「本復旧」が進んでいないことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。現場は周囲よりも薄いアスファルトで舗装した「仮復旧」の状態で2年以上留め置かれており、専門家は安全性への懸念を示している。長期連載『クローズアップ商社』内の特集『三菱商事「最強伝説」の終焉』の#2では、銚子の町を歩き、撤退後に残された深刻な課題を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 大川哲拓)

「空白の半年間」で計画が凍結
秋田でも100カ所の本復旧が未完了

 関東最東端に位置する千葉県銚子市。三方を海と川に囲まれた半島地形で、銚子漁港は全国屈指の水揚げ量を誇る。

 三菱商事が洋上風力発電事業の撤退を表明したこの町を歩くと、かつての熱狂の跡が、いびつな形で道路に残されていることに気付かされる。

 洋上の風車で生み出した電力を地上の変電所に送るためには、道路に送電線を埋設する工事が必要となる。銚子市沖のプロジェクトでは、千葉県香取市の変電所までの約50キロを結ぶ計画だった。

 送電線の敷設に先立ち、水道管や通信ケーブルなどの埋設状況を確認しておく作業が「試掘」である。試掘を終えた箇所は土などを埋め戻した上で、厚さ5センチ程度のアスファルトを舗装して車両が通行できるようにする。これが「仮復旧」の状態だ。

 仮復旧はあくまでも地盤が自然に締め固まるのを待つための暫定的な処置で、厚さ2~3倍のアスファルトをより広範囲に敷き直す「本復旧」を実施しなければならない。本復旧は地盤が安定する数週間から数カ月後に行うのが一般的だが、銚子のプロジェクトでは約400カ所で本復旧が実施されないまま約2~3年もの月日が経過しているのだ(下図参照)。

 本復旧が遅れている原因としては、三菱商事が2025年2月に「(事業を)ゼロベースで見直す」と発表してから正式撤退までに半年間の「空白期間」を要したことが大きい。

 もともと本復旧作業は、送電線の埋設が完了した箇所から順次進める計画だった。しかし事業の見直しで埋設工事そのものの着手がストップしたため、その先の本復旧計画も事実上凍結していたとみられる。

 では撤退発表からさらに半年がたったにもかかわらず、一向に本復旧が進まないのはなぜなのか。三菱商事は「道路管理者との調整や設計業務に時間を要している」と説明するが、“空白の半年間”で撤退の可能性を考慮し、一日でも早く本復旧に着手できるように計画を練っておけなかったのか疑問が残る。

 同様に撤退した秋田県沖のプロジェクトでも、約100カ所の試掘現場で本復旧が未完了だという。

 要するに三菱商事側には、結果的に掘る必要がなかった計約500カ所もの仮復旧箇所をひたすら舗装し直すという空虚な作業が残っているのだ。ただ空虚なだけではなく、本復旧には交通規制を伴うため、地元住民に負担を強いることにもなる。

 2年以上も仮復旧のままにしておくことで、路面に異常は生じないのだろうか。次ページでは、一部ひび割れが確認された試掘現場の写真を公開するとともに、舗装工学の専門家の見解を紹介。撤退に翻弄された漁業関係者や地元企業の悲痛な声も届ける。