緻密さと「ハート」を併せ持った組織

 札幌で過ごした6年。ファイターズの地域密着に向けた試みは成功をおさめたと言っていい。そして我々の努力がこれらの成果に結びついたと自負していい、とも思う。

「地域密着」を考えるにあたって大切なのは、「スポーツチーム」あるいは「スポーツクラブ」というものが、二重構造の組織であるということだ。球団やサッカークラブの中核には、言うまでもなく選手たちがいる。監督やコーチなどのチームスタッフが、彼らを強い集団に育てるための組織づくりを行っている。同時に、その外側には、フロントや社員たちがいる。ここでも、プロスポーツクラブを経営するという組織が稼働しているわけである。

 このような二重構造を持つ組織では、様々な専門性を持った人々が共に働くことになる。選手、監督、コーチ、スカウト、強化部、経営陣、運営スタッフ。違うスキルとノウハウをどう組み合わせ、どう相乗効果を持たせていくかが大きな分かれ目となる。

 いずれにせよ、もっとも避けなくてはいけないのが「単なる仲良し集団」となってしまうことだ。「なあなあ」になった組織は、情や贔屓目が判断材料となる。コストパフォーマンスを考えること、客観的で計数化できるデータを充実させること。ファイターズの基本姿勢とは、徹底的な合理性であると言っても良い。

 といっても、ファイターズが情を欠いた組織であるかと言えば、これまた答はNOである。組織の内部は、やはり一つの情でつながっている。それは、「目的を同じくしている」という連帯感であり、情熱である。

 ファイターズは、緻密なシステムで組み上げられた、ハートのある組織に変わったのだ。

(本連載は、藤井純一著『日本一のチームをつくる』から抜粋、改稿したものです。)


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プロ野球とJリーグの両方で社長を務めるという稀有な経験の持ち主、藤井純一。セレッソ大阪、そして北海道日本ハムファイターズで人気低迷から来る 大幅な赤字を「地域密着」というコンセプトで黒字転換させた彼は、いかにして地域密着を成し遂げたのか? スポーツで街を元気にする、経験に裏打ちされた 成功哲学。

 

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