11月2日、米国のトランプ大統領は、来年2月初めに任期満了となる連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長の後任の議長に、パウエル理事を指名すると発表した。正式に任命されるには連邦議会上院の同意が必要であるが、上院議員からも目立った異論はないだけに、任命に向けた支障はないとみられる。米経済は長期の景気拡大が続いており、一見、順風満帆の船出になりそうだが、先行きを展望するとそうでもなさそうだ。

景気後退で再びゼロ金利のリスク
共和党には量的緩和策への不信感

 前回の本コラム「本命が消えた次期FRB議長人事にトランプ大統領の影」で指摘したように、トランプ大統領は、次期議長の条件として緩和的な金融環境の維持を望んでいるとみられる。これは、米国経済が堅調に拡大していることを考えれば、イエレン議長が進めてきた緩やかな利上げと、保有資産の慎重な削減という金融政策の「正常化」とも両立し得る。

 だとすれば、パウエル新議長は、イエレン議長によってセットされた金融政策の「正常化」路線を粛々と進めれば、トランプ政権との深刻な対立を招くことなく米国経済を導くことができる。しかし、現在のような景気拡大がパウエル新議長の任期(少なくとも2022年の2月まで)を通じて続く保証はない。