例えばデパートの歴史を探れば、「そうか、昔はむしろ究極のリピート化戦略として、お帳場制度というものがあったわけだ!」ということにも合点が行くわけです。そうこうするうちに、ビジネスとしての可能性に新展開が生まれます。そうやって、私は新卒で4年が経つ頃には、この分野ですでに押しも押されもせぬ論客になることができました。

 それは昔の話だ。世の中はもっと複雑になっているし、やり尽くされた感があると思ってしまう読者も多いかもしれません。しかし、そうした状況はいつの時代にもあることです。これだけ変化の激しい時代ですから、むしろチャンスは昔より多いと思えます。

 どの分野を見渡しても、第一人者、最先端の法則などといわれるものでも、その研究を始めてから5年以内ということが多いのです。ただ、変化のスピードがそれだけ速いわけですから、スピード勝負であることは事実です。

 例えばCRMも古くて新しい領域です。業界も市場も常に変化し続けています。だから、同じCRMでも時代によって新しいカテゴリー、あるいは法則にスポットが当たるのです。

 だから、目をつけて研究を深めるスピードも大事であるし、さらに、そこで得られた知見の一端を発信し続けることも重要です。個人事業であれば、発信にはSNSの活用も必須でしょう。会社員であれば、とにかく機会を見つけて得た知識、考えた理論をしゃべりまくる。プレゼンやクライアントとの間だけでなく、友だちにも同僚にもしゃべる。

 そうすることで、人づてに「こんな問題意識を持っている人間がいる」と噂が広まるからです。そこに、直接的ではなくとも、ある種の誘客効果が生まれます。直接のプレゼン相手でなくとも、別のルートからいい話が生まれるということも少なくありません。

 もう1つの効果は、相手から反論されて穴が見つかったために、超速にブラッシュアップすることができるというものです。いわば他流試合です。そうすることで、自分の論理の弱点もわかり、そこを埋めることも早い段階でできてくる。そうやって実践的なプロになっていくのです。

 ただクライアントの要望に応えて研究し、提案するという日常の仕事よりも、自ら新たな分野の専門家になっていくことのほうが大変です。しかも、その領域が宝の山なのか、単なるボタ山なのか、最終的には登ってみないとわからないものです。

 私の場合は幸いにして宝の山でした。最後は銀行業界にも提案しました。そこで出てきた概念がライフタイムバリュー、顧客の生涯価値です。1人の顧客がその人の生涯でいくらの売り上げを生むかという考え方であり、その金額はかなりのものになります。だからその考えに立った戦略を立案できれば、初期投資もかなりできるということになります。まず給与振り込み口座を獲得し、次に公共料金の振り込み口座を獲得することが大事だという論議になり、後者のタイミングをどうやって察知するかといった議論をしました。

 その後、この話は発展をして、あるコンピュータメーカーが銀行に顧客管理システムを売りたいという戦略とタイアップして、そのための理論ベースを訴求するために、全国の地方銀行に展開しました。こうした仕事が生まれるのも、研究を続け、その考えを社内外でしゃべりまくっていたからです。そうして、4年間で私は顧客管理のプロになっていたのです。