企画書は、落書きで考える

 おでん屋さんにいる時に、「今度、こんな企画をやろう」という話になります。

 おでん屋さんにパソコンはないので、「お箸袋」にメモをしました。

 私の師匠の藤井達朗は、“お箸袋の企画書”が得意でした。

 師匠は、亡くなった大原麗子さんが出演していた「少し愛して 長く愛して」のサントリーレッドのコマーシャルなどが代表作です。

 お箸袋はスペースが狭いので、その場のみんなでアイデアを共有できます。

 師匠がすごいのは、それを持ち歩いてクライアントに見せて、プレゼンもそれでやるのです。

 そのほうがクライアントを説得しやすいというのです。

 きれいなプレゼンボードをつくると、そのきれいさにだまされます。

 お箸袋に書かれた小さいメモで、何をやろうとしているかという企画の意図がわかって「これ、面白いね」と言える時は、最高に面白いのです。

 コンセプトが明快にわからない時は、お箸袋にはとうてい書ききれないのです。

 そういうふうに発想しろと、師匠に教えられました。

 広告代理店の使い方のうまいクライアントさんは、プレゼンボードを禁止しています。

 見た目にだまされるからです。

 必ずプランナーが自分で書いたメモを持ってきてと言います。

 それを見るだけで、面白いか面白くないかがはっきりわかるのです。