組織で成果を上げる能力は生まれつきのものか<br />それとも習得するものかダイヤモンド社刊
1890円(税込)

「私は、成果をあげる人のタイプなどというものは存在しないことにかなり前に気づいた。私が知っている成果をあげる人は、気質と能力、行動と方法、性格と知識と関心など、あらゆることにおいて千差万別だった。共通点は、なすべきことをなす能力だけだった」(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)

 ドラッカーは、成果を上げる能力は、生まれつきのものか、後天的に習得するものかと問い、“習得するもの”だと断言する。

 かつて社会のパワーセンターは、国王をはじめとする少数の支配者だった。今日では、組織とともに働く一人ひとりの人間である。全員が成果を上げる能力を習得し、トップのように働かなければ、組織の成功、社会の繁栄はない。

 そこでドラッカーは、プラトンからマキャベリに至る賢人たちが時の支配者とその後継者たる王子たちに教えたように、現代社会の担い手たるわれわれ普通の者に教える。こうして、万人のための帝王学として、今日でも版を重ねている名著が本書である。わずか200ページ少々の本である。

 ドラッカーが習得できるし習得せよとする能力、つまりなすべきことをなす能力は、五つある。

 第1が、時間を管理すること、つまり、何に時間を取られているかを知り、残されたわずかな時間を体系的に使うことである。

 第2が、世の中への貢献に焦点を合わせることである。すなわち、成果に精力を向けることである。

 第3が、自らの強みに基準を据えることである。上司、同僚、部下についても、強みを中心に据えることである。

 第4が、力を集中することである。優先順位を決め、それを守ることである。

 そして第5が、成果をもたらすよう意思決定を行なうことである。

 ドラッカーは、組織は人だという。いかに資金を持ち、設備を擁していようとも、人を得なければなにもできない。

「組織としての活動ぶりはいまだ未熟である。膨大な資源が企業、政府機関、病院、大学に集められている。だが成果はあまりに平凡であり、活動はあまりに散漫である。あまりに多くの資源が昨日のために費やされ、意思決定と行動を避けるために費やされている」(『経営者の条件』)