こだわっている自分をアピールできる趣味をもたなければならない?
趣味をお持ちですか?
皆さんはこう問われたとき、人に言えるような趣味がないと焦りや気恥ずかしさを覚えてしまうことはないでしょうか。
「仕事、家事などに追われる毎日でも、趣味を持たなければいけない。趣味がない自分は人生をイキイキと生きていないのではないか」
そんな強迫観念にも似た感覚に駆られ、仕事や家事以外の「私生活」を充実させることに血道をあげようとする人が多いように見えます。
よくよく話を聞くと、どんな人でもそれなりに楽しい時間を過ごしています。
しかし、それなりに楽しい程度では趣味とは言えず、刺激的で非日常的な楽しさを満喫できてこそ趣味と言えると思ってしまっているようです。
しかも趣味のなかでも、人に誇れる「特殊性」も求められています。
かつて履歴書の「趣味」の欄に書かれていた「音楽鑑賞」や「映画鑑賞」は、現代では趣味として凡庸に思われてしまっているのです。
私の診察室に来る患者さんに、印鑑を彫る「篆刻」や植物の根を丸くしてその周りに苔を貼る盆栽の一種「苔玉」を趣味にしている人がいます。
それなりに楽しんでいるようですが、一方では息苦しさも感じているといいます。
最初は気晴らしだったのに、より洗練されたマニアックな趣味にしなければならないと仕事以上に厳しい姿勢で臨むようになった。やるからにはとことん追求し、どうせ趣味なんだから適当でいいやといういい加減な姿勢は許さない。
自分に対する要求水準が高く「こだわり」を持たないと気が済まない。そしてそれを他人に認めてもらうことまで追求するあまり、ストレスを溜め込んでいるのです。