最近の年金改革で、エポックを画したのが、2004年の改革である。同年6月に成立した年金改正法をもって(注)、年金は「100年安心」になったというのが、当時の与党である自民党および公明党の説明であった。もはや、それを額面通り受け止めている人はいないだろうが、他方、少なくとも当時において全く根拠がなかったわけでもない。100年安心とはそもそもいったい何だろうか。今回はその実態を明らかにしていきたい。

「100年安心」は
国民向けのキャッチコピー

 年金改革にあたって、現行制度かスウェーデン型かなどといった制度の姿かたちのみならず、長期的な時間軸を視野に入れて年金財政を考えることが重要である。高齢者人口が一段と増大し、低成長経済へ移行していくなか、約束通りの給付が行われていくのだろうか。また、将来の世代に過重な負担を強いることにならないだろうか。これは、制度がいかなる姿かたちをとろうとも、考えなければならない課題である。

 04年の改革で標榜された100年安心は、厚生労働省が、おおむね100年間を対象期間として、年金財政を推計していることに由来する。前々回の04年に行われた推計では05年度から2100年度まで、前回の09年に行われた推計では2010年度から2105年度までの何れも96年間が対象期間となっている。もっとも、「安心」という形容は、厚生労働省はさすがに使っておらず、自民党と公明党が国民向けのキャッチコピーとして用いているに過ぎない。厚生労働省自身は、96年間において「収支相等」であると説明している。

「収支相等」とは、推計の対象期間において帳尻が合うことを意味する年金用語である。例えば、次ページ図表1のような10期間の年金財政の保険料収入と支出の例を想定する。第1期から第5期までは保険料収入が支出を上回り、第6期から第10期までは、保険料収入が支出を下回っている。すなわち、第1期から第5期の間、積立金が積み上がり、第6期以降、それを取り崩すことで保険料収入の不足分をカバーし、10期間を通してみれば帳尻が合っている。収支相等である。

(注)2004年の年金改正の柱は、次の3つである。1.保険料率を毎年度段階的に引き上げ2017年度以降固定する。2.マクロ経済スライドを導入し、給付水準の段階的抑制を図る。3.基礎年金拠出金に対する国庫負担割合を3分の1から2009年度までに2分の1へ引き上げる。