どちらも極端な橋下さんと大阪府職員

 大阪府の財政はたいへん厳しい状況に置かれていました。一方的にお金が出て行くだけの施設をムダだと思われていたようです。

 一方で、廃止に反対する立場の意見はこうです。

「文化財なのだから、お金を生まなくてもいいではないか」

 児童文学館側は、貴重な文化財を守っているのになぜ廃止されるのかまったくわからないという声が大きかったようです。しかし、彼らの側もコストに対する意識が低かったかもしれません。文化財なら守られて当然という意識が強かったのでしょう。廃止一辺倒の橋下さんに対し、民間のコスト意識とはまったく無縁なところに立つ公務員が反論するだけの、説得力のある意見が出なかったのも、私は複雑な思いで見ていました。

 そうだとしても、私には「金を稼ぐものだけがいいもの」という市場の論理が極端に強すぎるのではないかと思えてなりません。

 確かに、企業であれば仕方がないでしょう。企業は収益を上げてこそ存続できるものだからです。

 しかし、企業ではできないことを担うのが公共的な事業なのではないでしょうか。また文化財の存在は、それ自体に収益が生まれるというものではなく、広くそして世代を超えた価値を享受できものではないでしょうか。

 そこをすべて競争原理にさらしてしまうのであれば、すべての事業を民間に委託してしまったほうがいいという話になってしまいます。

 前回の東京都知事選挙に立候補したある経営者も、自治体の運営は企業と同じだという意見でした。私は、素朴な疑問として考えざるを得ません。本当に、国や自治体は企業と同じなのでしょうか。