お金を生まない施設は意味がない?

 私は平松さんを応援する立場に立っていました。

 橋下さんを支持しなかった理由のひとつは、政策の実現性の問題以前に、橋下さんの議論の仕掛け方に違和感を持ったからです。

「僕の敵に回りますか? それとも味方になりますか?」

 まずA対Bのバトル構造を作り、そのうえで「さあ、どちらを取りますか?」と迫ってくる橋下さんのやり方に、抵抗を感じざるを得ませんでした。あたかも変化か現状維持かという問題設定にすり替えてしまう。変化は必要だが、それほどドラスティックな変化は望ましくないと考える人も、否応なく白か黒かの選択を迫るようなやり方です。

 もうひとつの理由は、橋下さんが大阪府知事に就任したときに遡ります。
橋下さんは、就任後すぐに府の事業の見直しを打ち出しました。当時、府立上方演芸資料館(ワッハ上方)、府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)、府立体育会館などがやり玉にあがったことを覚えておられる方も多いのではないでしょうか。

 私が気になったのは府立国際児童文学館廃止までの経緯です。

 この国際児童文学館は、およそ絵が描かれているものはすべて集めるという方針の特殊な施設です。資料的価値の高い漫画が揃っていて、研究者にとっては非常に有意義な施設として重宝がられていました。

 もちろん、橋下さんも漫画を捨てろと言ったわけではありません。

 しかしながら、文学館が廃止されれば、資料は分散して保管されることになってしまいます。この施設は一か所に価値の高い資料が集められていたところに意義があったと言えるので、資料さえ保管されていればいいという発想には賛成できませんでした。

 ところが、橋下さんは廃止を決定してしまいます。その理由は「金を生み出す能力がないから」という一点に絞られていました。