ファミリーレストランという業態を開発し、日本の外食産業を牽引してきたすかいらーく。創業家の1人、横川竟氏が8月12日、業績不振を理由に、株主であるファンドによって解任された。なぜ同社は低迷したのか。代わって就任した谷真新社長は同社を再建できるのか。解任騒動の真相と今後の課題を追った。
今回われわれの言い分が通らなかったら、資本主義の規律が守られない――。
外食大手すかいらーくの横川竟社長解任騒動の渦中、野村證券幹部はこう語った。
8月12日、すかいらーくは臨時株主総会を開催し、大株主である野村プリンシパル・ファイナンス(野村PF/持ち株比率61.6%)とCVCキャピタルパートナーズ(CVC/持ち株比率35.7%)の2社は、業績低迷を理由に横川社長を解任。ついに、ファミリーレストランの生みの親であり、創業家の1人である横川氏は完全にすかいらーくから去ることになった。後任には生え抜きの谷真常務執行役員が就任した。
すかいらーくは2006年9月、MBO(マネジメントバイアウト)により非上場化した。抜本的な事業構造改革と敵対的買収の脅威から逃れることを、その理由として説明した。主要株主は野村PFとCVCのファンド2社に変わり、横川氏の下、経営改革が行なわれてきた。
しかし、すでに2期連続の最終赤字で、今期も赤字は確実の状況。「横川体制では業績の立て直しは無理」(野村證券幹部)との判断から経営陣刷新へと動いた。
横川氏は、自分の経営手法に間違いはなく、業績向上には新たな増資が必要だとして、取引先であるサントリーの佐治信忠社長に数百億円規模の出資を要請。事態は横川氏と株主であるファンド2社との経営体制をめぐる対立へと発展した。
しかし、「社として出資要請はしていない」(谷新社長)というように、出資要請は横川氏のまったくの個人的な関係を基に、機関決定などされていない独断行動だった。サントリーのM&A担当役員も、この要請を知らなかったという。「株主によって首を切られる」という危機感からの、横川氏必死の行動だったことがうかがえる。