というわけで数日後、寝室に真新しい加湿器が登場し、(これで大丈夫)とベッドに入った安祐美さん。しかし、渇きはまったく改善しなかった。それどころか、冷たいものや熱いもの、香辛料入りの食べ物や酸味のあるフルーツ等々、食べようとすると舌に激しくしみて食べられない。パンのような水気の少ない食べ物は、いくらモグモグ噛んでも、パサついてしまって飲み込めない。

 四六時中口の中が乾き、しゃべろうとしてもスムーズに発声できないことが数回続いたため、水筒にミネラルウォーターを入れ、常に口に含んでいるようになった。大切な話をしている時に限って舌の根っこあたりがくっついて、ぺたりと喉を塞いでしまうのには、本当に参ってしまった。口が乾いているだけ、ではあるのだが、気が滅入る事この上ない。だが、安祐美さんに「病気」の自覚は薄かった。

 (そのうちよくなるのかしら)

 期待し、耐えるうちに2ヵ月が経過。ある朝、鏡に舌をうつしてみると、白くなった舌のところどころに、ピンク色の平たいクレーターのようなまだら模様ができていた。

「うわっ、気持ち悪い」

 驚いて拓郎さんに見せると、拓郎さんは衝撃的な言葉を口にした。

「それって、口腔カンジダ症。性病じゃなかったけ」

「まさか、ありえない」

 泣きそうな顔で絶句する安祐美さんだった。