年末の定番ネタとして昨年末は「社会貢献10大ニュース」と題してベスト10形式でさまざまな話題を振り返ってみた。しかし、今年はベスト10形式でやるとほとんど東日本大震災関係のネタで独占されてしまう。もちろん、それはそれで意味のあることだが、もう少し俯瞰して今年の社会貢献シーンを眺めるためにアワード形式で振り返ってみたい。昨年同様、筆者の独断で選ぶ賞なので細かいことは気にせずご覧いただきたい。
毎年1000人の復興リーダーを
生み出すというスケール感
まずは、『震災復興大賞』だ。
震災後、ホントに数多くの団体(企業やNPO、ボランティア団体など)が被災地に入り、献身的な活動を続けてきた。素晴らしい活動をしている人たちも多い。しかしホントの意味での復興、すなわち「Build Back Better」=以前にも増して活気ある東北を作り出す活動だと考えられる団体はあまり多くはない。
もちろん、対症療法的な支援も大事なのだが、復興支援には地域活性化という非常に大きな難問を解くという困難さがある。そこにあえてチャレンジしている人たちを今回は讃えたい。
候補としてまず浮かんだのが石巻市雄勝町の合同会社「オーガッツ」である。これは震災後に現地の漁師、水産業者、そして東京から来ていたボランティアらによって設立された新しい漁業のあり方を目指す会社である。雄勝の海産物を日本の、そして世界のブランドに育てることを目標にしている。また、漁師になりたい若者には、漁業権が取れるまで指導も行なうという。
漁業の復興には、新しい漁業を生み出すことが必要で、その意味でオーガッツの目指す方向性はまったく正しい。ニューズウィーク誌(日本版)でも紹介されるなど、マスコミに対する情報発信力もある。復興大賞の資格十分なのだが、筆者はまだ彼らに会ったことがない(メンバーの中に知人はいる)。会ったことのない人や団体に、マスコミの報道や他人のウワサだけで賞を授与するわけにもいかない。というわけで、残念ながら選外とした。
で、結局のところ、復興大賞は仙台の一般社団法人ワカツク代表理事の渡辺一馬氏に贈りたい。筆者も普段からあちこちで「復興リーダーの大本命」と触れ回っているので、渡辺一馬氏が復興大賞と言われてもあまりに順当すぎて拍子抜けしている読者も多いかもしれない。
しかし、東北の地に毎年1000人の復興リーダーを生み出していく、それを3年間続けていくという渡辺氏のビジョンは壮大だし、実現すればたしかに東北は大きく復興する。そして、東北の復興にはこれくらいのスケール感が必要なのだ。スケールアウトできないことが日本の若い社会起業家の最大の弱点だと言われている。その弱点が、被災地支援でも露呈している。支援の発想にスケール感がないのだ。団体の体力によって活動が小さくなるのはしょうがない。しかし、発想は大きくあるべきだ。支援活動をしている団体はもちろん、さまざまな被災地支援を行なっている企業も、渡辺氏のスケール感に学ぶべきだろう。