訪日ビザの有効期限が90日しかなく
クルーズの長期化で新たな課題に

 しかし、こうした濃密な交流ができたクルーズだったが、逆に課題も炙り出された。

 クルーズ終盤は、太平洋から日本に寄港、そして上海に帰港し下船する予定だったのだが、船が日本に帰港する直前、急遽メンテナンスが必要となることが分かった。そのため、日本で4日間の滞在を余儀なくされ、それに伴って上海帰港も4日間延長されることになってしまったのだ。

 帰港日程の変更により、Sさんはどうしても都合が合わないため、横浜で下船し、中国に帰国することとなった。

 そもそも、日本寄港時の訪問許可は、船で入国してそのまま出国するというトランジット扱いになるため、日本の観光ビザは取得していない状態だった。

 しかし横浜で下船するとなると、トランジットではなく入国手続きが必要となる。Sさんはビザを持っていなかったため、下船した横浜港ターミナルから成田空港まで、入国管理局が車で送迎をするという形で、特別に入国許可をもらうこととなった。

 Sさんは、約100日間のクルーズ中にできた、東京在住の日本人の友達に誘われて、横浜で下船後に一緒に横浜で食事や観光を楽しみ、その友達の家に宿泊し、温泉に連れて行ってもらい、翌日かその翌日ぐらいに帰国しようと考えていた。

 日本には、東京へ一度しか来たことがなく、温泉に行くことを一番の楽しみにしていた。だが、結局、下船後の自由行動が認められなかったため、「次はゆっくりと日本に来てね、来るときは必ず連絡してね」と言う日本人の友達と、横浜港で涙ながらに別れた。

 実は今、「クルーズ新時代」とも言われるほど、クルーズ旅行が盛んになっているのだが、ビザの問題が新しい課題となっている。

 中国で発行された訪日ビザの有効期限は、ほとんどが90日間。仮に、訪日ビザをもらって日本発上海寄港のクルーズに乗り、100日以上の世界一周の旅に出たとすると、世界を一周して日本に帰ってきたときにはビザが切れてしまい、Sさんのような困り果てた状況に陥ってしまうのだ。

 大手旅行社のJTBも昨年11月27日に発表会を開き、豪華客船による日本発着の世界一周クルーズ「2019年サン・プリンセス 世界一周チャータークルーズ98日間」を2018年1月18日から発売すると発表した。

 このクルーズにおいても、ビザの問題が課題となるだろう。つまり、ビザ問題はますます普遍性を持ってくるというわけだ。現在の規制の中で、こうした新しい課題をどう解決するのか。まさに、日本の官民一体の智恵と工夫が求められる。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)