販売会社が「売りたい」と思った
投資信託だけが力を入れて販売される

 さらに、ファンドマネジャーが独自の運用方針を貫いて良い成績を続けたとしても、その投信が売れるとは限らない、というところも問題です。

 現在の投信業界において売れる投信というのは、良い運用をしている投信ではなく、販売戦略に乗った投信だからです。

 つまり、証券会社や銀行などの販売会社が「これを売っていこう」と決定した投信だけが、積極的にセールスプロモーションされ、売れるのです。そして、その売ろうとする投信は、とにかく販売側にとって手数料の稼ぎやすい投信です。それは、長い目で見て投資家の資産作りに役に立つというものではなく、その時々の流行に合っているテーマの投信や手数料率の高い投信などです。

 目先の手数料を追いかける投信業界の姿を象徴しているデータがあります。

 投資信託の販売時手数料と信託報酬を合わせたコストは2003年からずっと上昇傾向にあり、2011年ではなんと平均で4.16%です(モーニングスター調べ)。つまり100万円投資した途端に4万円以上の手数料が取られてしまう状態なのです。

 しかも、これは、投資した100万円の中から経費として取られているために、投資家からははっきり認識しづらくなっているのです。巧妙に高い手数料が吸い取られ、気付いたら基準価格(株価に相当する価格)が下がっている……というパターンになりやすいわけです。

 これでは、良い投資信託も出てきづらいですし、良い投資信託が出てきても投資家がそれを知ることはなかなか難しいのです。

直販投信というイノベーション

 こういった状況もあり、私は自分で運用するアクティブ投信「ひふみ投信」を証券会社や銀行といった販売会社に頼って販売するのをやめました。

 販売会社に頼ってしまうと、結局は売りやすいように商品を変えないといけなかったり、手数料も高くなってしまうからです。

 私が取った方法は、販売会社を通さずに、個人投資家に直接販売する「直販投信(ちょくはんとうしん)」という方法です。これは、個人の方たちに、その投資信託を運用している会社に口座を開設していただき、直接、投資信託を買ってもらうという方法です。

 同じ形態を取った投資信託は「さわかみ投信」が有名ですが、私は、そのさわかみ投信の代表である澤上篤人さんに啓蒙されて同じスタイルの投資信託を始めました。そして、直販方式で「コストが安く」「真のアクティブ投資」を実現した投資信託「ひふみ投信」を、現在も運用しています。

 詳細は拙著に譲りますが、実は日本ではそんな直販という形で、内容が優れた投資信託を販売している会社は現在8社あります(販売会社を通していないので、もちろん販売手数料は無料です!)。10年前にはさわかみ投信1社しかなかったことを思えば、投信業界に新しいイノベーションを起こしつつあると言ってもいいのではないかと思います。

 私は今後も時価総額にかかわらず「成長している会社」を見つけて、投資をしていこうと思っています。これを読んでいる読者の皆さんにもぜひ仲間になっていただければ、こんな嬉しいことはありません。

■著者紹介
藤野英人(ふじの・ひでと)
レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者(CIO)。
1966年富山県生まれ。90年早稲田卒業後、国内外の運用会社で活躍、特に中小型株および成長株の運用経験が長く、22年で延べ5000社、5500人 以上の社長に取材し、抜群の成績をあげる。中でも99年には500億円⇒2800億円にまで殖やす抜群の運用成績を残し、伝説のカリスマファンドマネ ジャーと謳われる。
その後、2003年に独立、現会社を創業。現在は、販売会社を通さずに投資信託(ファンド)を購入するスタイルである、直販ファンドの「ひふみ投信」を運用。ファンドマネジャーとして高パフォーマンスをあげ続けている。
主な著書に『【図解】スリッパの法則 5000人の社長に会ったプロが教える! 伸びる会社vs危ない会社の見わけ方』(PHP研究所)、『もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら』(阪急コミュニケーションズ)、『運用のプロが 教える草食系投資』(共著:日本経済新聞社)他

ツイッター @fu4
ひふみ投信 http://123.rheos.jp/

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