「残業が当たり前」から全員19時前退社へ!大和証券の働き方改革 社会全体が長時間労働問題に無関心だった2007年、残業が常態化する証券業界で「19時前退社」に挑戦したのが大和証券だった。同社はなぜ成功できたのか

社会全体が長時間労働問題にまだ無関心だった2007年、残業が常態化する証券業界で果敢にも「19時前退社」に挑戦した企業が大和証券である。なぜ、大和証券は先んじて成功できたのか。当時、社長として働き方改革に手腕をふるった鈴木茂晴・日本証券業協会会長に、小室淑恵・ワーク・ライフバランス社長が聞く。(まとめ/アスラン編集スタジオ 渡辺稔大、撮影/内藤洋司)

働き方改革のきっかけが
女性活躍推進だった理由

小室 今日はよろしくお願いします!鈴木さんに初めてお目にかかったときは『太陽にほえろ』のようなハードな風貌と「働き方改革」「女性活躍」のイメージがマッチしなくて驚いたのを覚えています(笑)。さて証券会社といえば、かつては男の世界。女性活躍も働き方改革も、従来の証券会社にはなかった考えですよね。どういうきっかけで始められたのでしょうか?

鈴木 私は入社直後の仕事が営業でしたが、そのあと本部と投資銀行の経験が長く、社長になったときには営業の支店を何年も見たことがなかったわけです。証券会社の社長は、大阪や名古屋といった大きな支店には行っても、普通、小さな店にはいかない。そこで、自分が社長になったからには、小さな店も含めてできるだけたくさん回ってみよう、と。

小室 社長になられた直後ですから、2004年頃ですね。

鈴木 そのとき驚いたのが、女性がすごく頑張っているということ。私が営業をしていた当時、営業職は男性で占められていました。その後、女性の営業部隊ができたのは知っていましたが、実際に行ってみたら、女性も男性に混じって同じチームで働いていたんです。折しも男女混合の組織に再編した直後で、その風景が非常に新鮮だったんですね。しかも、女性がいい成績を収めている。でも、男性と比べてなぜか昇格が遅く、ボーナス評価も低かったんです。

小室 どうしてですか?

鈴木 食事会の席で彼女たちに直接話を聞いてみたところ、「私たちは会社から期待されている気がしない。女性が成績を上げたら支店長もラッキーという感覚なんです」との声が一番多かった。