第二に、構成が論理的でメリハリが利いていた点です。
オープニングで、「大学を卒業していない自分にとって、今日が卒業式に最も近い日だ」「今日の話はたった3つの経験談だけだ」と言い切り、聴衆の関心をつかむと同時に、これから展開される話に対して心の準備をさせました。
本題（ボディ）に入ると、若い頃から時系列に3つの話を述べ、教訓を伝えました。そして最後に、若い頃の愛読書『全地球カタログ』の言葉、「ハングリーであれ、愚かであれ」（Stay Hungry, Stay Foolish）を用いてスピーチを締めくくりました。
つまり、オープニング、ボディ、クロージングの三段階という、聞き手が迷子にならない明快な構成だったのです。
第三に、自らの実体験をストーリーとして語った点です。
客観的な描写と違い、自らの体験を主観的に語るストーリーは、聴衆に追体験を可能にします。さらに、聴衆自身が過去に遭遇した同じような経験を思い出させる効果もあります。ストーリーは、聴衆の心を揺さぶる効果があるのです。
さらに言えば、論理性（ロゴス）、情熱（パトス）、信頼性（エートス）という、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの言う説得の条件をきちんと満たしていました。
次回からいよいよ、スピーチづくりのテクニックに入っていきます。まず最も重要なメッセージの絞り込みから解説します。
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