スティーブ・ジョブズ、オバマ大統領、TED……聴き手の心をとらえて離さないスピーチに注目が集まっている。しかし、カリスマでなくとも、基本さえ理解すれば、聴き手の心を動かすスピーチは誰にでも可能だ。スピーチの専門家が、その秘訣を紹介する。 

顔の見えないプレゼンが増えている

佐々木繁範(ささき・しげのり)1963年福岡県北九州市生まれ。1987年に同志社大学経済学部を卒業後、日本興業銀行に入行。1990年にソニー株式会社に入社。盛田昭夫会長の直属 スタッフとして企業外交を補佐、その間にスピーチ・ライティングを学ぶ。1995年から97年までハーバード・ケネディ・スクールに留学、公共経営学修士 号を取得。帰国後、2001年まで出井伸之社長の戦略スタッフ兼スピーチ・ライターを務める。ソニーでは計100本以上のスピーチ・サポートを手がけると ともに、IT戦略会議の議長補佐として、IT国家戦略の策定にも携わる。その後、数社にて経営改革に携わり、2009年に経営コンサルタントとして独立。 リーダーシップとコミュニケーションを専門とし、経営者やリーダーの組織求心力と影響力の向上を実現するためのメッセージ発信を支援している。
ロジック・アンド・エモーション代表

 先日、あるフォーラムで、2人の話を聞く機会がありました。

 1人は大企業の幹部で、震災後のビジネスについて語りました。30分の講演の間、ぎっしりと文字や情報を詰め込んだスライドが約30枚、次々と映し出され、話し手は終始スクリーンを見ながら説明していました。

 終わった後、覚えていたのは、会社名と数枚のスライドだけ。話の内容はもとより、話し手の顔も名前すらも思い出せませんでした。

もう1人は社会活動家で、震災復興への取り組みについて語りました。話には気迫がこもっており、被災地で復興に取り組む人たちの光景がありありと目に浮かびました。

 最後に語りかけた支援への呼びかけには心が揺さぶられ、講演が終わったあとも、何か協力できることはないかと考えてしまうほどでした。

 両者の違いは何でしょうか?