「想定よりもずいぶん早いな……」。本拠地の関空から外資系LCCに中距離路線で先行され、ピーチは焦った。ピーチが狙うのはハワイではなく東南アジアだが、ここでも外資系に先行されれば成長シナリオが大きく狂ってしまう。

 競合の動向に加えて懸念していたのが人手不足だ。ピーチは中距離進出の他に、3年間で13もの新機材を導入し、国内の地方路線の拡充を図る方針だが、運航を支える人材計画に不安があった。

 そこでようやくバニラに目を向けた。バニラは総計400人のパイロットと整備士、客室乗務員を抱える。「貴重な人材を赤字のバニラが抱えたままではもったいない。成長軌道にあるピーチが有効活用すれば、もっと利益を出せる」(前出のピーチ幹部)。こうしてバニラをてこ入れしたいANAHDと、人材を確保して路線拡大を急ぎたいピーチの思惑が一致した。

2社で異なる感情
統合ショックを乗り越えられるか

 経営側の決断を現場はどのように受け止めるのだろうか。というのも“統合ショック”はバニラだけでなくピーチにも起きる可能性が高い。ピーチ社員には、他の航空会社にはない独自のノウハウを積み重ねて業績を上げた自負があり、「“失敗した”バニラと一緒になれば、自分たちの努力が水の泡になる」などと以前から統合に否定的な意見が多い。こうした負の感情を払拭できるかどうかが、統合の成否を握りそうだ。