現在は、地方自治体の関係者に向けた“お披露目”の段階にすぎないが、同社でこのプロジェクトを率いる岩佐航一郎氏は「19年内の本格稼働を目指す。30年代前半には、売り上げ規模で1000億円を実現したい」と力を込める。

 この数字は、少し遠慮しているように思われる。実は、このプロジェクトが動き出してからの積水化学では経営幹部が「石油や天然ガスに頼らない新システムで、50年後に世界を変える」と口にするようになっているからだ。社内でも期待感から盛り上がりが続く。

化石燃料に頼らずリサイクル

 現在、積水化学では、ビジネスを広げるために、(1)エンジニアリング会社と協業して完成させたプラントを納入する、(2)設備で生産した割安のエタノールなどの販路開拓でも協力する、(3)海外企業にエタノールの生産システムを有償でライセンスする、などの展開を検討している。

 かねて大手化学メーカーの一角を成す積水化学は、「上流部門」のエチレン・センター(ナフサ分解装置)を自前で持っておらず、「中~下流部門」に軸足を置いてきた。全ての石油化学製品の母体となる――今や市況に振り回される最大の要因でもある――エチレン生産を自ら手掛けていない積水化学は大手メーカーに対して“引け目”にも似た感情を抱き続けていた。

 ところが、今回のエタノール・プロジェクトは、有限である化石燃料の枯渇が叫ばれる中で、既存のエチレン・センターとは異なる “もう一つのやり方”で上流部門に手を伸ばす。積水化学が開発したのは化石燃料に頼らない循環型のリサイクル・システムなのだ。

 現時点で、積水化学が満を持して世の中に打ち出すエタノール・プロジェクトは、環境対策面で難癖を付けられる要素がない。さらに、他の化学メーカーは扱えない唯一無二のシステムでもあることから、50年後の世の中を見据えてどこまで健闘するのか見物である。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)